「漢字の宿題が嫌!」その原因と、子どものタイプに合わせた漢字学習を”修行”にさせないコツとは?
子どもの勉強嫌いのきっかけは「漢字」?
教育家・見守る子育て研究所 所長
小川 大介
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。
私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。
小学校低学年で勉強嫌いになってしまう子たちに話を聞いてみると、「漢字の宿題が嫌」「漢字で先生にバツをつけられた」という声を聞きます。
ただひたすら漢字を書き写すだけの宿題では、子どももやっていて楽しいとは思えませんよね。
特に小学校低学年は、子どもそれぞれのタイプに適した学びのスタイルを発見することが重要な時期でもあります。
「こういうふうにやりなさい」と型に押し込めて、漢字嫌い・勉強嫌いにさせるのではなく、漢字学習を通して我が子に合った勉強方法を見つけていきたいものです。
「勉強して当たり前、覚えて当たり前」のスタートラインは既に基準値が高い!
まず、漢字を難しく感じる理由はなんでしょうか?
一つに、文字の中の情報量が非常に多い、という点が挙げられます。
アルファベットやひらがな・カタカナと比べて、漢字は形が非常に複雑になっています。
縦・横の線があり、はらい、点があったり…と、一文字の中の情報量がとても多いです。
かつ、その形状に対して、読みが複数ついてくるわけです。
熟語の組み合わせまで考えると、その掛け算で、ものすごい数の言葉を生み出すことができます。
現に、よく海外から来た人が日本語を勉強するときに、
漢字について「何で読み方が違うんだ?」と言います。
これらを理解し、頭に入れて、さらに覚えたものを使うという一連の流れは、学習サイクルがまだ身についていない低学年の段階では、特に難しく感じることも、ごくごく自然なことだと思いませんか?
親御さんには、まずここの前提をわかってあげてほしいな、と思います。
子どもの日常生活での漢字の関わり
小学校の6年間で1025字程の漢字を習いますが、その漢字たちのうち、お子さんが日常生活の中や、遊びの中で、どれぐらいの文字と出会うでしょうか?
・例えば自分の名前の中に入ってる漢字
・自分が住んでる住所で用いられている漢字
その他にも列車が好きな子だったら、
・駅名に出てきた漢字、など
これらは自分ごととして覚えやすいのではないでしょうか?
一方、そういった関わりのない漢字に関しては、興味がわかないというのも、仕方のないことですよね。
面白みを感じられないものに対して、「勉強だからやりなさい」と言われたら、どんな人だって勉強が嫌になってしまいます。
漢字学習の目標は「◯◯力」と「◯◯力」を高めること
そもそも、なぜ漢字の勉強をするのでしょうか?
例えば「やらなければいけないから、やる」というのは、理由になりません。
ほかにも、「正確にきっちり正しく書くため」というのも、どうでしょう。
たまに、「とめ・はね・はらい」をきっちりと仕上げるべきだと、たくさんバツをつける先生もいるようですが、僕はそれはナンセンスだと思います。
もちろん、ちゃんと仕上げられるタイプの子に、仕上げさせてあげて丸をつけてあげることはいいのですが、仕上げることが苦手なタイプの子に、低学年からあまり細かいことをいうのは、学習意欲を下げるだけではないでしょうか。
それ以上に漢字学習には、もっと大事なことや、目標がある、と僕は考えています。
それはずばり、「理解力と表現力を高めること」です。
漢字の学習とは、語彙力を上げることだと思うのです。
ひらがなや、カタカナ・アルファベット、などのいわゆる表音文字(音を表すだけの文字)と違い、漢字は表意文字、つまり意味を表す文字です。
意味を表すことができる文字というのは、その一文字に、既にストーリーが、言葉があるのです。
漢字一文字が既に言葉となっていて、その言葉の土台となる感情を学んでいく結果、漢字を組み合わせることによって、非常にたくさんの表現を叶えられるようになります。
ということは、漢字学習をすればするほど、わかる言葉が増え、わかる言葉が増えるから読んで理解できる知識量が増えていきます。
逆も然りで、漢字を学ぶことによって、語彙力が高まり、自分の思いや考えを伝えるという表現力にも繋がっていくわけです。
「読める、書ける、伝えられる、という力を育むためのツールとして漢字学習がある。」
この順番を親御さんには間違えないで欲しいです。
我が子に合わせた家庭学習のポイント
実際、家庭ではどのように漢字学習に取り組んだらよいのでしょうか?
情報量が多く、複雑な漢字を覚える際には、書いたり、読んだり、発音したりと複数の感覚を積極的に取り入れていくことがポイントです。
コドモトメガネでは、お子さんそれぞれの学習タイプに合わせた学び方をアドバイスをしていますので、ぜひ参考にしてください。
【コドモトメガネ_タイプ別】視覚優位の子
視覚タイプのお子さんは、漢字も映像で把握するので、パッと見ることは好きだけど、同じことを繰り返しやることは嫌い、という傾向があります。
このタイプの子に、同じ漢字を10回15回繰り返し書きなさい、というやり方は集中力が切れてしまいます。
それよりも、一撃必殺で、「今1回しか見せてあげないからね」「5秒しか見せてあげないから行くよ」などと声をかけて見せると、とても集中して取り組んだりします。
そんな風に、集中度を上げてゲーム性を持たせてあげると、頭に残りやすいです。
ただ忘れやすい面もあるので、寝る前にもう一度見直すなどの工夫もすると漢字の学習がもっと楽しくなるのではないでしょうか。
【コドモトメガネ_タイプ別】身体感覚優位の子
身体感覚タイプのお子さんは、体の動きや、刺激を通して学びを得ていく子ですので、小さくこまごまと漢字を学ぶことに負担を感じることがあります。
なので、できるだけ大きく漢字を書くなどして、ノートを贅沢に使わせてあげて欲しいと思います。
全身を使って覚えるという意味では、ホワイトボードなどに書くこともおすすめです。
その際、大きく「はらい」を意識して書くなどすると、体の動きを通して、すんなり覚えられたりします。
また声に出して覚えることも有効ですが、その際は体が震える「音の響き」を感じてほしいので、お風呂で大きな声をだして覚える、ということも試してみてください。
【コドモトメガネ_タイプ別】 聴覚優位の子
聴覚タイプのお子さんは、耳からの刺激を好みます。
漢字数え歌のようにして「たて書いて、ちょん」といったぐあいに筆順を歌で覚えたり、書き取りの文を音読して意味を考えてから、漢字を書くようにすると記憶に残りやすい傾向があります。
また勉強して間違えた漢字には、「この漢字には点があるんだ、気をつけよう」などと、自分で気をつけたいポイントを口に出すということも効果的です。
小川大介の「見守る子育て式」アドバイス
学習後の声かけでは、「書けたね」「覚えられたね」で止まらずに、
「また使える言葉が増えて面白いね」「読める文章が、これでレベルアップするね」といった褒め方・伝え方をしてみましょう。
ぜひ、お子さん自身が「成長した」喜びを感じられる機会になるとよいですね。