「見守る子育て」についてお伝えしていると、たまに「ただ見守っているだけでは、子どもがわがままになりませんか?」といったご質問をいただくことがあります。
確かに、ファミレスやスーパーで子どもが走り回っても注意しない親御さんが増えています。
いわゆる褒めて育てるという意味をよくわからずに、間違えた褒めて育てるを実践してしまっている親御さんもいらっしゃいます。
そういった環境で育ったお子さんは、成長して社会に出ていったときにちゃんとやっていけるのかな?と他人事ながら心配になりますよね。
今回は、「見守る子育て」で誤解されやすい、
「個性を尊重する」と「わがまま」の関係について、僕の考えをお伝えしていきます。
見守る子育て「才能タイプアプローチ」への誤解
まず初めに、確かにわがままな人は年々増えているように思います。
冒頭で例にあげた、ファミレスやスーパーで子どもが走り回っても注意しない親御さん。
また親子関係だけでなく
「モンスターペアレンツ」「カスタマーハラスメント」などという言葉もよく耳にするようになりました。
そして電車に乗っていても、「降りる人が先」と当たり前に教えられていたことが守られていない場面に出会したりもします。
老若男女、年齢や男女を問わずにこのような行動を取る方が年々増えているな、と感じています。
日本社会が持っていたとされる「思いやり」「周囲への気遣い」「モラルの高さ」などが崩れていっている、と苦々しく思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
さらに、これは日本だけの問題ではありません。
アメリカ社会では年々わがままな人が増えていっているという大学の調査データもあります。(ノートルダム大学サラ・コンラス先生)
「個性を尊重する」の本当の意味
このような傾向について、僕なりに原因を考えた時に、
「個性を尊重する」という意味合いをわかっていない人が増えたのではないかと考えました。
個性を尊重するということと、相手に自分を大事にしてほしい、という意味の違いを認識せず、ただ自分のことだけを指して、「個性の尊重」という言葉を使用する人も少なからずいらっしゃるようです。
個性を尊重するためにはいくつかのポイントがあります。
それが、次の5つではないでしょうか。
①違いを認める
②共通点も認める
③その人がその人らしくあることを支援し、評価する
④人間関係を豊かに、調和を生み出す
⑤それぞれの人が自分の信念や価値観を追求出来る環境を作る
つまり、認め合いながら調和を生み出していくところに「個性を尊重する」ということの本来の意味があるのです。
実は、これは僕たちみんなが小学校の社会の時間に習っています。
憲法を学んだ時ですね。
そこで「公共の福祉」という概念を、日本の大人たちは全員習っているわけです。
公共の福祉に反しない限り、それぞれが尊重される、と教わりましたよね。
つまり、個性を尊重するということは「個」で成立しているのではなく、
「個」と「その他の個」、「たくさんの個」つまりは「個」と「社会」のやりとりの中で、互いの関係性の中で、尊重し合うという意味合いを持っています。
社会があっての「個」であるということが欠落している限り、個性の尊重という理解から遠ざかってしまうのですね。
そうした本来の意味での理解ができていない人達が増えてしまった今の社会で、子育てしていくことは本当に大変です。
多くのわがままな人達を見ているからこそ、うちの子は大丈夫だろうか?と心配になる親御さんの気持ち、僕もよくわかります。
「わがまま」にならない、本当の見守る子育て「才能タイプアプローチ」
僕が世の中に伝え続けている「見守る子育て」を正しく理解していただければ、そして本来の意味合いで取り組んでいただけたら、子どもがわがままに育つことはありません。
子どもがわがままに育つかどうかは、親御さんや周囲の大人たちが子どもにどのように関わっていくか、が大きな影響を及ぼすということが過去の調査結果から明らかになっています。
その中では特に間違った形での「過干渉」な関わりが危険だそうです。
その前提を踏まえて、ここで本当の意味での「見守る子育て」についてお伝えさせてください。
見守る子育てにおける「才能タイプアプローチ」では、子ども本来の力を見つけ出して、引き出し、社会で発揮していける子育てを実現できる具体的なアプローチを日々研究し、実践を重ねていっています。
才能タイプアプローチは、次の3つのステップで構成されています。
それが「①観察、②分析・理解、③具体化」です。
才能タイプアプローチによる子育ては、世間一般の子育てや教育のイメージとは随分違っていると思います。
社会に蔓延している教育法は「あれをやらせたらいい」「これをやっておいた方がいい」
「ここまでやりなさい」といった、やらせることを考えたハウツー型の教育になっていませんか?
僕はこれを「与える教育」と呼んでいますが、
それのどこが問題かというと、才能タイプアプローチでいう3段階のうちの①のまず子ども自身を「観察」するという視点が入っていません。
また、その次の観察に基づいた②分析・理解で、その子自身を理解する、我が子の行動の意味を分析する、といった大事なところも抜け落ちているように思います。
つまり、③の具体化のやり方だけを見ているんですね。
すると、誰でも彼でも同じやり方を渡すことになります。
それを普通、常識だと思い込んでいる人達は「やらせるか・やらせないか」の視点でしか子育てや教育を考えられない傾向になるので、「見守る」と聞くと「何もしないんだな」といった誤解にもつながりやすくなってきます。
ここを理解している人は、「見守る」ということが簡単ではないこと、「何もしない」なんてとんでもない、「見守る」の中には、やることが非常にたくさんあるということを知っています。
そうなんです、「見守る」の中には、たくさんやることがあるんです。
見守っている間、親御さんはお子さんに対し、目で、耳で、感覚で、そして頭もたくさん使ってもらいます。
その上で、子ども本人が自分の才能を発揮して活躍していける具体的な寄り添い方を見つけ出そうと試行錯誤し、実行を重ねていきます。
見守る子育てでは、親御さんがお子さん本人を見て、
その上で親としての行動を選択していくため、本当の意味での「見守る子育て」をやっている方々は、絶対に過干渉にはなりません。
なぜなら子どもにとっていらない関わりはなくなっていくからです。
親御さんは必要な範囲で助け、困っていたら教えますが、本人が動けるようになってきたら本人にどんどんと委ねていくようになっていきます。
それが見守る子育ての「才能タイプアプローチ」なんですね。
なので、見守る子育てを実践されているご家庭では
わがまま放題、周囲に迷惑をかけて周囲を困らせても謝ろうともしないといった態度の子どもが育っていくことは考えにくい、ということをお伝えさせていただいています。
例えば、間違いを認めない、癇癪を起こす、兄弟に対して暴言を吐く、など
今現在はそういった振る舞いがあったとしても、
見守る子育てを学び、実践されている親御さんはそのお子さんの一つ一つの行動の裏側に
何を訴えているのか、何に困っているのか。
何かしたいけど、できない自分にもどかしさを感じているのか。
など、意味を理解していきます。
そしてその困ったことに対しての、親としての手伝い方が少しずつ上手になっていき、
お子さん自身が暴れたり、防御行動を取るといった必要がなくなっていき、その行動自体が少なくなっていきます。
だから着々と見守る子育てを続けていく中で、お子さんの姿が変わってきます。
それに伴い、親御さん自身がやらなくてはいけないことも、どんどん減っていくんですね。
一緒にわが子なりの理由を見つけていきましょう
今回は、個性を尊重することと、子どもがわがままに育ってしまうのではないかという不安についてお伝えしてきました。
お子さんの言うこと、することについて、
この子は何が言いたいんだろう
この子の中ではどういった思いが動いているんだろう
本人なりの意味を考えてみつけよう
そんな意識を持ちながら是非お子さんの姿を観察していってほしいな、と思います。
ありのままを、そのままをみて、その上で本人理解に落とし込もうとする、そういった本当の意味での「見守る子育て」を一緒に実践していきましょう。