見守る子育て 最終更新日時:2024.05.29 (公開日:2024.06.09)

「格差社会の教育問題」3000万円時代を乗り越える最重要戦略

「格差社会の教育問題」3000万円時代を乗り越える最重要戦略

今、子育て費用3000万円時代と言われています。内閣府の調査によると、幼稚園から大学まで私立で通うと4000万円を超える、という発表もありました。実際には受験をすれば、それにかかる塾代で5000万を余裕で超えてしまいます。

 

当然そんなお金を誰しもが負担できるわけがなく、この子育て教育費の問題というのは、教育格差であり、社会格差の問題とも密接に繋がっていて、親をやっている誰しもにとって、心が穏やかでいられない、非常に悩ましい問題ですよね。

 

今回は、この格差社会の教育問題を考えながら、子育て費用3000万円時代を乗り越える最重要戦略について、お伝えしたいと思います。

    Contents

  1. お金を使える人が勝ち組で、お金が使えない人は負け組なのか?
  2. 大事なのは「幸福感」、子育ての先の人生が幸せか
  3. お金に頼らない「学歴形成」のポイント 
  4. 我が家の戦略に自信を持ち、最大限の幸福を
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

お金を使える人が勝ち組で、お金が使えない人は負け組なのか?

端的に言うと、お金は便利です。

専門的な支援サービスを受けたければ、やはりそれなりの費用が発生しますし、それを払える環境にある人と、払うことが難しい環境の人とでは、専門的な学びのチャンスを手に入れやすいかどうかは、当然変わってくるでしょう。

では、お金が使える人は勝ち組で、お金が使えない場合、子どもは負け組なのでしょうか?それは本質を見誤っています。そのことを、これからお話していきたいと思います。

 

大事なのは「幸福感」、子育ての先の人生が幸せか

最初にまず、「子育て」という期間は、いつまでだと思いますか?一般的だと成人する18歳まででしょうか。

大学卒業までと考えたら、22歳~24歳というところまでは親として子どもを育む、守ってあげたいと思うかもしれません。

 

でも、子どもの人生を考えると、その子育ての後の人生の方が圧倒的に長いわけですよね。

 

その長い人生を歩む中で何が一番大事かというと、「幸福感」の厚みをできるだけ分厚くすることだと僕は思います。

 

そして、その幸福感はどこから生まれてくるかというと、当たり前ですが、本人が「幸福だ」と思うことです。今流行りの言葉で言い換えれば「自己肯定感」というものを持っていることです。

 

自分が決めた満足感を得られれば、人は幸せに生きられて、自分が選んだ道を見つけた人は、お金がたくさん入ってくる仕事かどうかではなく、自分自身の関心の世界で、その仕事を選んでいきます。

もちろん絶対的な生活水準というのがあるので、ある一定以上の収入は必要ですが、わが子の18歳とか20~24歳までの中だけの「満たされ感」だけで物事を考えず、70年、80年、90年の人生において考えるなら、制約の中でも、自分らしさを発揮し、自分の道を得て、自分の仲間を得て、自分の人生の目標というものを作り出していける、そういう力こそが、親が育んであげたいエネルギーなのではないでしょうか。

 

お金をたくさん使えば使うほど自己肯定感が生まれるかというと、全く違うわけです。ですから、長い人生で考えれば、目先の使えるお金の格差というのは、それほど大きな影響を及ぼさないと僕は思っています。

 

大切なのは、親子の対話であり、ひとつひとつの生活の中での時間や、子どもが感じ取ったこと・反応を丁寧に受け取り、膨らませていけるかです。その方が遥かに大事なのではないでしょうか。学習参考書を100冊買っても読めません。それよりも、1冊しかない参考書を何回も何回も見た方が、基礎学力はぐっと上がると思います。

 

また今は、YouTubeでも様々な教育コンテンツがあります。国算理社といった、いわゆる科目の学習に限りません。

様々な分野の著名人、アスリートや芸術家のスピーチも見ることができますし、そこからいくらだって学べるんですね。もし、英語の勉強を頑張れば、海外の教育コンテンツも使えるようになるので、とても良いと思います。世界中の著名な大学は、様々な授業を無料で公開してくれていますから、それを見ることもできます。

このように、学ぶ意志と、自分というものの価値観、自己意識・自己認識というものが強く育っていけば、今はお金をかけずに学べる環境は、たくさんあるんですね。

 

ですから、お金はあくまで便利さが手に入るかどうかなのであって、チャンスがなくなるかどうかを意味するものじゃない、ということを誤解しないようにしましょう。

 

お金に頼らない「学歴形成」のポイント 

大事なポイントは、「短期決戦ではなく、中長期の視点を持つ」ということです。

短期決戦はお金がかかります。お金をかけないためには、中長期の視点や大きな展望を持ちながら、ひとつひとつコツコツ積み上げていく、戦略と戦術が必要となってきます。

 

例えば、発売直後の物でも、食材にしても何でも、今すぐ欲しいとなったら、高いですよね。でも、少し先でも良いと思って、育てるところから始めれば、努力はいりますが、かかるお金は抑えられます。

 

そして、もう一つ大事なポイントは、「学歴」という言葉の意味を理解することです。日本は長らく学歴とは「入学歴」をさしてきました。「東大に入ったすごいね、京大に入ったすごいね」とは聞いても、その中で何を学んだのかというのは、ほとんど関心を持ちません。

 

けれども、世界の標準では、学歴とは「学習歴」です。どういう専門分野を極めてきたのか、どういうところでオリジナルの世界観を持つに至ったのか、どういうスペシャルを持っているのか。そこを評価します。だから、ステップアップするたびに大学院に入り直したりして真剣に学ぶし、海外の大学は日本の大学とは比べ物にならないくらい猛烈に勉強するわけです。

 

短期決戦の「入試」というものだけで評価しようとすると、お金を使えるか使えないかの格差を感じるかもしれません。けれども、目先のお金が使えなかったとしても、その得られた環境において真剣に学び、自分の進むべきところを見つけて仕事に反映していく、「自分形成」というものを、5年10年という中長期の戦略に立って育んでいけば、十分に戦えるわけです。

 

つまり、小学生の親御さんたちは、我が子がしっかりとした武器を持って、社会の中でやっていけるように、自分たちはどう応援したら良いのだろうか、といった観点をぜひ持ってほしいと思います。

 

お金が使える人は、専門チームを選んでドリームチームを作れますが、お金が使えないなら、中長期で戦略を立てたらよいのです。今できる最大のことは、今日の我が子の姿を見て、昨日から今日の成長、昨日から今日に向けての努力、そして変化、そこを見つけて褒める・認める・励ます。この日々の関わりです。

 

そうした中で、本人自身が「自分は大丈夫だ。自分ならできるんだ。自分はこういう方向で頑張っていけばいいんだ」と思う、応援してもらえているこの安心感が大切になってきます。

 

我が家の戦略に自信を持ち、最大限の幸福を

教育費の問題や、子育て費用の問題については、親としての焦りやコンプレックスが刺激されやすい話題です。その親の不安感、焦り、焦燥感、コンプレックスを子どもに押し付けてしまいがちなのですが、そこだけは少し踏ん張って、こらえ、知恵を使って、ご自身の家庭なりの手立てというものを考えた上で、うちなりの幸福、この子なりの人生が育っていけばいいということを、真剣に考えてほしいと思います。

 

お金は確かに便利です。使えたら楽です。でも大事なことは、我が家の使える子育て予算・教育予算枠の中で、我が子の可能性をいかに見つけ、引き出し、発揮させてあげるかです。制約の中で最大の幸福を見つけていけばいいんです。

 

そのためには、5年、10年先の未知の我が子を見つめるということと、うちはうち、よそはよそ、できる努力をしているんだから、これがうちの教育戦略なんだということに、自信を持つことです。そのために、毎日調べたり、工夫したり、色々なことに知恵を働かせる必要が出てきます。

そうしたひとつひとつが親子の思い出になり、親としての自信にもなってきます。みんなそれぞれに頑張って、そしてもがきながらも子育てしていますが、目標は、幸せな人生にしようよ、ということだと思います。

お互いできることを見つけていきながら、我が子のことを信じて、この大変な時代を乗り越えていきましょう。