見守る子育て 最終更新日時:2024.05.08 (公開日:2023.11.30)

子どもが自ら伸びる家庭は父親が⚪︎⚪︎!父親が心得るべき最も大切なこと

子どもが自ら伸びる家庭は父親が⚪︎⚪︎!父親が心得るべき最も大切なこと

子育てに熱心なパパたちが「残念イクメン」に陥ってしまわないために、知って欲しいことがあります

    Contents

  1. 父親である前に夫である
  2. 「妻を支える」ということ
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

父親である前に夫である

少子化や核家族化、女性の社会進出と、家族を取り巻く環境が急速に変化している今、のびのびと子どもが育つために父親に期待される役割とは何でしょうか。

一家の稼ぎ手として家族を守る。
常識やルールを教えて、社会と子どもとを結びつける。
寝かしつけやお風呂など、子どもの世話を積極的に担う。

そんな父親像が世間的には語られることが多いようです。いずれの役割も大切で、その通りなのですが、ここには根本的に足りない重要な視点が1つあります。

それは「父親である前に夫である」ということです。

子どもを持つ男性は、父親であることを意識するより前に、「夫であることの意味」をご自身に問うてみてほしいと思います。子どもがのびのびと育つかどうかは、安定した夫婦関係の先にあるものだからです。

大前提として子どもは、どんな理屈を並べたとしても、母親のことが大好きです。男の子女の子問わず、乳幼児期に限らず、小・中学生、高校生になっても母親に褒めてほしいし、甘えたいもの。女の子の中には思春期あたりから、同性同士ゆえの反発心を露わにする場合もありますが、母への思慕の念がなくなるわけではありません。日常で接する時間の分厚さや、心の届き具合も、子どもにとって母親というのはやはり圧倒的に特別な存在です。

ですから、子どもの成長にとって最も重要な父親の役割とは、自分が子どもに対してどう振る舞うか以前に、

「母親である妻がどうしたら笑顔でいられるか」
「妻が安心して子育てできるには、どのような環境が必要か」

を意識して行動することなのです。

子どもにとって一番大切な母親を、大事にしてくれる人がいい父親である――。

この結論に至る過程で、私自身も夫として父親として何百回、何千回と反省を重ねてきました。子どもを持つ周りの男性たちと話していても、「いい父親になりたい」という欲求がある人が多い一方で、「いい夫でありたい」と意識している人はほとんどいませんでした。

これは男性優位社会だった前時代的な「家事、育児は母親が担うもの」という強固な固定観念に起因していると、私は思います。専業主婦家庭が多く、家庭によっては同居する祖父母の協力も期待できた昭和の時代ならまだしも、平成になって核家族化が進み共働き家庭が主流になると、新しい父親像が求められるようになりました。

2010年ごろには男性の育児参加を推進する「イクメン」という言葉も流行しました。しかし、モデルとなる父親像がないままに、父親としての新しい役割を遂行するのは難しいものです。夫はSNS上で「イクメン」ぶりをアピールはするけど、実際には家の中で全然助けになってない、といった妻側の不満の声がたくさん上がるようになりました。

そもそも「イクメン」とは、いかにも男性優位社会が生み出した言葉に感じられて、私はこの言葉が出始めた時から違和感を覚えていました。親が子育てに関わるのは当たり前のことで、男性が子育て参加することをわざわざ取り上げる言葉が生まれること自体がおかしいでしょう、と。

結局、令和になった今もなお、家庭内での子育ての役割分担の割合はまだまだ母親に集中していますよね。家事育児に夫が物理的に参加すれば、その分だけ母親の負担が軽くなる、というほど問題は単純なものではないのです。

「妻を支える」ということ

では、夫は妻をどのように支えればいいのでしょうか。もちろん妻の子育て行動を全肯定すればいい、という話ではありませんよ。現実には、子どもに対して過干渉だったり、教育熱が高すぎたりする母親もたくさんいますよね。

大事なことは、肯定する・否定する(注意する、アドバイスする)というスタンスではなく、「認める」「理解する」というスタンスに立つことです。

過干渉や教育熱の過剰さが気になったなら、妻をそのような姿に追い込んでいる、母としての責任感や義務感という重い荷物の存在に気づく。そしてその重荷を肩から下ろさせてあげることが、夫の大事な役目となるでしょう。

また、妻が子どもを叱る様子があまりに激しく、時に虐待を疑うほどにエスカレートするような時。夫はどのように受け止め、どう関わればいいのでしょうか。「ダメじゃないか」「それは違う」と一方的に指摘したり、修正方法を指示したりすることでは決してありませんね。

知識のある方は、「DV連鎖」という、精神的・肉体的虐待を受けて育った親(父親・母親問わず)が、結果的に自分も子育てで同じ状態に陥ってしまうという、複数の世代にわたる深刻な問題を思い起こすかもしれません。

しかしここでも、夫としての務めは「認める」こと。「正しい・正しくない」と裁くのではなく、パートナーに何が起きているのかを理解しようとする姿勢です。

「大切な存在である妻が、怒りの感情を制御できない事情とは一体何なのだろう。怒り散らしたくてしているはずがないのだから、そこまで追い詰められる何かを抱えているんだろう。そこから抜け出させてやりたい、助けてあげたい」という視点をもって、妻に接することなのです。

私自身も親になりたての頃は、自分の目線でだけ奥さんの言動を見て、よかれと思って「アドバイス」ばかりするような夫でした。つまり、実態としては「問題指摘型」のダメ夫だったのです。その自分のダメさに気づくのに何年もかかりましたし、気づいた時の奥さんへの申し訳なさは例えようもないものでした。だからこそ今、反省も込めて強く伝えたいのです。

日頃から子どもに対するパートナーの様子・行動をよく観察すること、事情がわからないならわからないなりにねぎらう、感謝を口で伝えること、自分ができる家事を意識的に増やす。そうした日々の小さな一つひとつこそが「妻を支える」ということなのです。

一口に「妻」といっても、外でバリバリ働いて常に動き回るタイプの人もいれば、家でゆっくりと落ち着いて過ごすことが好きな人もいます。さらにその人の活動量やエネルギーの違いによって、子どもからみた母親としての姿も千差万別です。

父親である前に夫であるということ。妻の姿を見て、「自分の妻はどういう人間で、どのようでいられることが大事か」を考えること、そして夫自身も「自分はどういう心持ちでいられることを求めているのか」と自分を見つめ直すこと。それを夫婦で互いに話し合い、理解し合うことが、子どもにとってよき親であるためにも絶対に大切なのです。

夫婦がお互いを思いやり認め合うと、家族の中に余裕ができ、子どもの精神的な自由空間が生まれます。「さあ、父親として育児家事を頑張るぞ」と気合いを入れなくても、子どもが自ら伸びることができる家庭環境となるのです。

これが父親の在り方を考えるうえで重要なポイントです。意思疎通がうまくいってなかった夫婦も、行動と振る舞いを変えるとみるみる関係性が良くなる例を、私はこれまでたくさん見てきました。改善のお手伝いも数多く担ってきました。
意識を変え、行動を変えれば目の前に見える夫婦の姿、家族の姿は変わっていくのです。

現に、男性優位社会の固定観念の影響が少ない、30代前半より下の世代の家庭を見ていると、「家事育児を夫婦ともに行う」そのような考え方がどんどんと浸透しています。これは日本社会にとって喜ばしいことだと私は思います。

「父親である前に夫である」という意識が当たり前となる社会を、共に築いていきたいものですね。