お子さんは、勉強は好きですか?学校や塾の宿題を楽しそうにやっていますか?
YESと答えられるようになる秘訣を、ぜひ知ってください
わが子を「勉強好き」に導く3つの秘訣。苦手意識の克服方法を徹底解説
教育家・見守る子育て研究所 所長
小川 大介
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。
私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。
子どもを勉強好きに育てるには、どうしたら良いですか?
「子どもを勉強好きに育てるには、どうしたら良いですか?」
私は、これまで6000人を超える子どもたちの学習指導に関わるなかで、多くの親御さんからこの相談を受けてまいりました。勉強に対してやる気がない子どもを見ると、親としては心配になりますよね。でも安心してください。子どもを「勉強好き」に導くために必要な3つの要素をお伝えしますので、ぜひ今日から意識して子どもと関わってみてください。
「勉強好き」に導くために必要な3つの要素
①近くにいる大人が「その子らしさ」をしっかりと理解すること。
わが子がどんなタイプなのかをはっきりと把握し、その特性を学習面においてどう生かしていけばいいのか、近くにいる大人がしっかりと心得ていることです。
②具体的な「勉強のやり方」を、早い段階から身につけさせること。
「勉強ってこういう風に進めればできるようになるんだ」ということを、目標を細分化してどのようにしたら目標を達成できるのか、大人がていねいに教えることです。
③成功体験を積ませてあげること。
上記2つの要素に、「やってみたらうまくいった」「マルがたくさんもらえた」というプラスの体験が組み合わさることによって、子どもを「勉強が好き」「勉強ができる」という状態に導けるのです。
上手なお膳立てをどうつくる?
「うちの子、なかなか勉強やる気にならなくて」と頭を悩ませる方も少なくないでしょう。
じつは、やる気にもとづいて目標を設定することや、見通しを立てて行動することは、9歳〜10歳ごろから初めて有効になる考え方といわれています。
まだ人生経験が少なく、言葉を介した理解力が育っていないの幼児期〜小学校低学年の子どもにとっては、まず「行動」が先にあり、その結果どのような感覚を味わったか、という考え方が大切です。
ひとまずやってみたら、「うまくいった」「面白かった」……そんな感覚をおぼえて初めて、「もっとやってみたい!」「もっとこうしてみたい」とやる気や意思が出てくるようになるのです。これは、スポーツや音楽といった習い事や遊びでも同じですよね。
関わる大人としては、「とりあえずやってみようか」と誘う段階から、「あれ、結構うまくいきそうだね!」という段階までの「お膳立て」を上手にできるかどうかが、腕の見せ所です。
この「お膳立て」をどうやってつくるのか。それには、普段から子どもをよく「観察する」ことが大切です。
子どもがどんなときに、頭が、そして心がよく動いているか。
何かに取り組むときの、「慎重に考える度合い」の程度はどのくらいか。
嬉しいときはどんな喜び方をするのか。
わが子の様子をよーく観察してみてください。
子どもには、それぞれ行動の傾向や「学び取り方」のタイプがあります。
タイプに合わせてうまくいきそうな方法で、本人が楽しく思えそうなものに「出会わせてあげる」ことが大切です。
まずは、そんな認識を持ってみましょう。
失敗から学ぶ、というけれど……
勉強をいち早く嫌いになってしまう子どもたちを見ていると、この出だしの「お膳立て」を大人が上手に与えられていないパターンが多いな、と感じます。
新しいことをはじめるときに、課題を唐突にポンと与えられ、
「解けない」
「わからない」
「他の子より時間がかかってしまった」
などという挫折体験をいきなり味わってしまったら、気持ちが遠ざかってしまうのは当然のこと。何でもかんでも闇雲に与えて、始めから「失敗から学べ」というのは、乱暴な話なのです。
「そうはいっても、失敗から学ぶこともあるはずだ」と思われる方もいるかもしれません。
もちろん成長していくうえで、失敗から学ぶ力を育むことは必要不可欠。しかし、失敗から学ぶには、その前段階として、「成功体験が十分に積まれている」ことが絶対条件です。
成功体験によって築かれた「自分への信頼感」が根底にあるからこそ、「自分はできるはず」と前向きに取り組むことができ、失敗しても「うまくいかないなんておかしい」と疑問を抱いて、「もう一度試してみよう、何か解決策があるはずだ」と立ち向かっていけるのです。
次々に新しい習い事をさせることで、子どもの自主性が育たず受け身がちになってしまっている、教育熱心だけれど「残念な」家庭を時々見かけます。
その体験が、「やらされている」というカタチだけのものなのか、本人にとってちゃんと「自分を生かす」体験になっているかどうか、親は見極める力が必要なのです。
たいていの「苦手」は思い込み
失敗の話が出ましたが、学習の過程で「苦手」にぶつかることも当然あるでしょう。
じつは、苦手というのは、「能力的に難しい」というより、「思い込みで苦手と感じてしまっている」だけのケースが多いのです。
物事を苦手と認識するには、その前に「なんだかできそうにないな」「難しそうだな」という不安や躊躇のステップがあるはず。
どんなステップでつまずいてしまったのかを理解したうえで、大人側の工夫で乗り越えられることがほとんどです。
どんな条件が揃えばできるのかな、どうしたら面白くなるかな、と一歩踏み込んで考えてみませんか。
例えば「あなたはお絵描きが上手だから、文章だけの問題はつまらないよね。イラストを描いて考えてみようか」というように、大人が柔軟に対応してあげることが大切です。
いわば、成功体験を積むためのお膳立てを「要素分解」して、苦手を少し「加工」してあげることで、子どもの「これなら取り組めそう」という前向きな気持ちを高めてあげることが重要なのです。
教育というのは、子どもを変えること、改造することだと思い込んでいる大人が多いと感じることがあります。
学校教育には、決められたカリキュラムがあって、それを進めていく中で、この単元ではこのスキルを身に付けてくださいというメニューがあります。
それを鵜呑みにして「○歳になったら一律これができるようになるはずだ」という発想に縛られてしまうと、本来の子どもの姿が見えなくなってしまう恐れがあります。
物を捉える、理解するといった認知力、また、言語的な能力の度合いに応じても、取り扱う内容は変わってくるのが、当然なんです。
そのため、親が「わが子理解」をしっかりと進めて、「うちの子の場合だとこんな感じかな」と家庭ごとに学習メニューをカスタマイズしていくことで、その子らしく学ばせてあげることができます。
「その子らしい成長を、気持ちよくさせてあげる」ことを意識すれば、その成長過程で自然にできることが増えていくでしょう。
本来、教育とはそのように「子どもの本来の力を導き出す」ものなのです。