子育てをする中で「間違っていたら注意する」といったことは避けては通れません。ただ、子どもへの叱り方は、ともすれば子どもを傷つけてしまったり、自信を失わせてしまったり、といった危険性もはらんでいてなかなか難しいものです。叱る言葉の選び方について私達大人は、慎重にならなくてはいけないと思います。今回は、「言ってしまいがちなNGフレーズ7選」と題して、叱る理由や声かけのコツをお伝えしたいと思います。
【叱り方】子どものやる気をゼロにする親の声かけとは
教育家・見守る子育て研究所 所長
小川 大介
1973年生まれ。京都大学法学部卒業。
私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。
言ってしまいがちなNGフレーズと改善策7選
言ってしまうこと、それ自体が駄目だということではありません。ただ、言葉選びは重要です。
子どもを叱る必要があったことと、言い方を選ばなかったことは、切り離すことがポイントです。では、具体的なNGワードを見ていきましょう。
① 「置いていくからね」
例えば、子どもが地面に座ってギャーギャー言って動かない。自分自身の予定が狂ってしまうとか、自分も疲れていて子どもを正面から受け止めるほどの気力が残っていない、などの事情があると思います。ただ、この言葉はなかなか厳しいもので、子どもたちにとっては、「自分がもういらないんだ」と、非常に重たい言葉として傷ついたり、「置いていけるものなら置いていってみろ」と、親の言葉に対する信頼が落ちてなめられたり、と2つのパターンがあると思います。
では、どうすればいいのでしょうか。ポイントは「まずは聞いてあげる」ことです。まず受け止めて、それから大人から子どもに親の事情も伝える、この順番を意識してみてください。
具体的には、「どうしたの?そういう風に思っていたのね。今日は約束の時間があるからできないけれど、でも、あなたの気持ちはちゃんと伝わったから大丈夫」と、子どもが安心する状況を作ります。それから、ママやパパの気持ちも聞いてもらえる?と、子どもにお願い口調で聞いてみましょう。「まずは受け止めてあげる」これが、一つ目の改善策です。
② 「ちゃんと言いなさい」
子どもがボソボソと言ったらもうイラッとする。それはこの時代、自分の意思をはっきりと表明し、自分の考えを持つことがとても大切だということを、僕たち親が知っているからです。
ゴニョゴニョの先にある、この子の不安な将来を勝手に想像し、親としての恐怖心などが混ざって、イラッという怒りに変換されてはいませんか?
しかし、子ども本人に、声が出せるという自信や自分の言葉を相手が聞いてくれるという安心感が無いと、そう簡単にはボソボソと喋る子がハキハキと喋るようにはなりません。ですから、親は、叱るのではなく「応援する」。このスタンスが大事です。
例えば、「ちょっと聞きそびれたから、もう一回言ってくれない?」と、声をもう少し大きく出してみると聞きやすいということを伝えてあげたり、「言葉で上手に思いつかなかったら、どんな感じかだけでも教えて」と、まずは気持ちを伝える場面を作ったりしてみましょう。
そうすれば、本人も慣れて声も大きくなり、意見も言えるようになります。
注意したいのは、子どもが最後まで言う前に、「それはね」と、上からかぶせてしまうことです。
ちゃんとはっきり喋らないように仕向けているのは誰?という、自分を客観視する、そんな大人としての成熟さも必要かもしれません。
③ 「まだ終わってないの?」
これは、親が当然これぐらいはやっているだろう、という期待感があった時に出る言葉じゃないでしょうか? ただ、子ども側に立てば、できてないところを指摘されることが何回も続くと、できない自分の自覚がどんどん高まり、自己肯定感が下がってしまいます。
そこで、完了していないにしても、子どものできているところを見つけて、“できた”を使って、できていないことの行動を促していくことが大切です。
例えば、「どこまで終わったの? ここまではできたのね。あとこれだけ残っているのなら、どれぐらいの時間でできそう?」と、見通しを立てると、意識の中で「できた」イメージを持ち、子どもも行動しやすくなります。
まずは今どこまで終わったのかを確認し、「じゃあ、次どうしていこうか」と考える。このスタンスで応援するということを、ぜひ意識して欲しいなと思います。
④ 「あなたのためを思ってやっているのよ」
この「あなたのために」と親が言ってしまう時、困ったことに、子どもの方は「頼んでないよ」「そっちが勝手にやったんでしょ」と、口答えしやすいセットになっています。この原因は、親が先回りしてやってあげすぎている点にあります。
本人任せにしていたら前に進まないから、結局手伝わざるを得ない。しかし、そんなシーンが続いていくうちに、子どもは受身になり、指示された目先の行動だけをただこなすようになります。
ですから、いかに自分事として取り組ませ、必要な場合には親に助けてもらうという意識を持たせていくことがポイントです。
例えば、「難しそうなところがあったら教えて。教えてくれたら手伝うよ」と、主人公はあなたで、親はあくまでサブ、という空気感を大事にしていくと、「誰のためにやっているの?」は、あまり言わなくてすむようになるのではないでしょうか。
⑤ 「何度言ったらわかるの?」「何でできないの?」
大事なことは、お子さん自身が実行できるようになることです。
いきなりできるようにしなくては、と責任を負うと、親も辛くなってしまいますから、例えば「昨日同じことを言ったのは覚えているかな?」と、まず1回思い出してもらってから、「覚えているかな?まだ難しそうかな?」と聞き、子ども自身がどう思っているのかをまずは答えてもらうようにしましょう。
これだけでも、ずいぶん変わってきます。
⑥ 「もう●●歳だからできるでしょ!」
文字にして書かれていると、年齢ではなくその子の成長が決めるもの、とわかっていても、他の子はできているのではと思うと、やはりザワザワしてしまい、苛立ちや怒りになってしまうのは当然の感情の反応です。
なぜ言ってしまうのか。やはり、できて欲しいという願い、その一点ですよね。
言ってしまいたくなったら、「どこまではできそうかな」「どうすればできそうかな」そんな言い方を意識してみましょう。
さらに「今日ここまで終わると、ご飯の準備がしやすくて助かるんだけど、できそう?」と、10あるうちの2個でも、区切ってあげると、本人にとっても「それならできそう」という気持ちになります。こんな工夫もあっていいと思います。
⑦ 「恥ずかしいからやめて」
特に世間体や周囲からの目に神経を張ってきている方にとっては、子どもがマナーに反することをしたり、人から見てどうかということに対して、強く恥を感じたり、残念さを感じたりといったこともあるでしょう。
しかし、これはかなり危険な言葉で、「私って恥ずかしい子なんだ」と、自分の人格全体が恥ずかしいものという受け取り方になり、ひどい時には本当に生きていく上の気力をなくし、深い傷が残ったりする場合もある程、リスキーな言葉だと思っています。
対処法としては、否定語ではなく、どう振舞って欲しいかを伝えましょう。手が汚れたら洗いに行く、ハンカチを持っていなかったらハンカチを貸すなど、具体的に教えてあげ、望ましい行動にしてあげましょう。
【見守る子育て流】子どもをすでに傷つけてしまった方へ
言ってしまったものは仕方がありません。その時には、叱る言葉を言わざるを得ない心理や状況があったわけですから、その思い自体は間違ってはないのです。
ただ、伝え方を知らなかっただけです。
今、その伝え方は違っていた、と気づけたのなら、どうするか。謝ればいいのです。
親子関係が望ましく、お互いが尊敬しあっているご家庭では、親は必要な時には、子どもにしっかりと頭を下げています。なぜなら、1人の人として尊重し、お互いを大事にし合えるからです。
親だから子どもに頭を下げるのは、といった上下関係では、子どもが親に対して尊敬の気持ちを抱かないという点は、みなさん理解できるのではないでしょうか。
そして是非、あなたの幸せを願っているよという、親としての当たり前の気持ちを積極的に伝えてあげましょう。
すると、子どものやる気や自尊心を傷つけるような言葉を言わなくて済むようになります。
親も勉強しながら成長していけば、子どもに対する接し方も落ち着いたものになっていきます。焦らず、段階的に一緒に学んでいきましょう。