見守る子育て 最終更新日時:2024.05.08 (公開日:2023.11.30)

子育ては命がけ!ママが子どもにイライラしてしまう納得の理由

子育ては命がけ!ママが子どもにイライラしてしまう納得の理由

「イライラするママたちへ、心からの拍手を送りたい!」
そのワケを聞いてください

    Contents

  1. 子どもへのイライラが止まらない。どうしたらいい?
  2. イライラする母たちへ、心からの拍手を送りたい
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

子どもへのイライラが止まらない。どうしたらいい?

子育ての相談に乗っていると、勉強の悩みと並んでとにかく多いのが、「子どもへのイライラ」に関するお悩みです。

何度言っても子どもが言う通りにしない。もどかしい、情けない、腹立たしい。気がつけばカッとなって怒鳴ってしまい、それを繰り返しては自己嫌悪におちいる……。

じつは、母親の子どもに対する「イライラ」には、とても大事な意味が込められているんです。今回は、母親がわが子にイライラしてしまう5つの原因についてお話をしたいと思います。

イライラの原因①:その怒りは、愛情深さゆえ

まず、心に留めていただきたいことは、「親が子どもを怒ってしまうのは子どもへの愛情が深いがゆえ」ということです。
親なら誰しも、大切なわが子の将来を案じ、幸せになってほしい、周囲の人とうまくやり、スクスク育ってほしいと願うもの。

その願いが深ければ深いほど、「子どものやりたいようにさせていたら、ワガママになってしまうのではないか」「ちゃんと宿題に取り組まないと、ダメな子に育ってしまうのではないか」なんて心配事も大きくなる。

イライラしてしまったときは、自身の愛情が、心配を過度に生み出す方向に暴走してはいないか、頭の中をちょっと点検してみてはいかがでしょうか。

イライラの原因②:疲れが余裕をなくさせる

イライラの原因の2つ目として、「疲れ」が挙げられます。

現在のお母さんたちは、家事に育児に仕事にと、とにかく忙しい。それゆえ寝不足になりがちです。寝不足の状態だと人間の脳内では「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが減少し、物事をネガティブに考えてしまうようになります。

健康な状態なら、想定外の行動を子どもがとっても「面白いな」と思えますよね。でも疲れて余裕がない状態だと、「なんでそんなことをするの⁈」とつい腹が立ってしまうもの。

ゆったりとした気持ちでわが子と向き合うためにも、十分な睡眠と健康的な食事、そしてリラックスできる時間を積極的に持って欲しいなと思います。少し贅沢に感じたとしても、時には美容院やネイルサロン、お気に入りのカフェなどで、自身をいたわる時間を持つのがオススメです。

イライラの原因③:「比べる病」に要注意

イライラの原因の3つ目に、「比べる病」があります。
他の子やインターネットなどで流れてくる子育て情報と自分の子どもを比べて、「よその子はもう○○ができるのに、それに引き換えうちの子は……」と気にしてしまう状態です。

比べることによって現状を把握し、安心する。それは人間の本質であり、自然な感情です。また、そこには「他の子よりわが子の方が優れていてほしい」という親のホンネも潜んでいるでしょう。でもこれを過度に続けると、精神的な健康度はどんどん落ちていきます。

自分が比べてしまっているな、と気づいたら、そんな自分を理解しつつも、「自分軸」を取り戻してほしいものです。

他人や世間ばかりを見つめて、わざわざ自分を落ち込ませるのではなく、わが子をちゃんと理解し、育てていくことに集中する。そうすれば、モヤモヤとした感情から生まれる怒りの発生頻度も減っていくでしょう。

イライラの原因④:言うことを聞かない⁈

「子どもが言うことを聞かないんです」。そうおっしゃる親御さんはとても多いです。

「言うことを聞かない」という状態には、3種類あると私は思っています。
それは「聞かない」「聞けない」「聞こえていない」。

「聞かない」というのは、「意思をもって拒絶している」状態です。1人の人間としてその子の意思を尊重しつつ、こちらの考えを押し付けるでもなく、子どもの言いなりになるでもなく、互いの考えを伝え合い、より良い道を探っていけたらいいですね。

次に、「聞けない」は、親が話す言葉の意味が理解できない、もしくはどうすればいいか分からない状態。「なんで宿題しないの⁈」と親が怒っている家庭をよく見ると、じつは子どもが勉強の仕方が分かっていない、というケースが多い。「もう1年生なんだから分かって当然よね」などと考えず、寄り添うことが大切です。

3つ目の「聞こえていない」は、子どもが他のことに熱中してしまい、親の言葉が耳に入っていない状態です。肩をトントンと叩いたり、「おーい、こっち向いて」と声をかけたりして、まずは意識をこちらに向けてから、改めて言いたいことを伝えてみるようにしましょう。

このように見ていくと、「子どもが言うことを聞かない」という状態は、大抵の場合、子どものせいではなく、大人側に事情があります。「言うことを聞かない」と思考停止せず、子どもをしっかり見つめて理解し対応する。そうすれば、子どももちゃんと動き出せるようになります。

イライラの原因⑤:“ちゃんとやらなきゃ教”

全部をちゃんとやろう、間違いなく完璧にやり切ろう。そんな親御さんが増えているなと感じます。

お話を聞くと、皆さん「ちゃんと」の基準が高すぎる。そうすると、日常のほとんどが「やろうと思っていたのに、あれができなかった」「これは駄目だった」というネガティブな自己評価につながりがち。私はそんな状態を“ちゃんとやらなきゃ教”と呼んでいます。

自分に対して、「ちゃんとやらなきゃ」「もっとやらなきゃ」と言葉をかけ続ける癖がある方は、一度それを減らす練習をしてみませんか。

自分の立ち位置や状態を尊重して、「今持っている条件の中では、できる限りやったんだ」。そう自分を認めてあげてください。理想の「ちゃんと」に縛られて、「自分責め」をするのはもう止めましょう。

自分を責めている人は、自分への負い目が、ひっくり返って子どもへのイライラに結びついてしまうことも多い。自分への攻撃が減ると、わが子と向き合ったときにも、不思議とイライラしなくなりますよ。

イライラする母たちへ、心からの拍手を送りたい

以上が、イライラしてしまう5大要因です。

もっと本質的なお話をしますと、母たちのイライラの根底には、「命がけで子育てをしてきた」という事実があります。

母親は、お腹の中にわが子を授かった瞬間から、文字通り子どもと一心同体になり、自分が口にするものや生活リズムなど、あらゆることに気を遣うようになります。赤ちゃんが生まれた後も、疲れる体に鞭打って頻繁に授乳をし、細心の注意を払って沐浴をし、夜は赤ちゃんが泣く前の「ヒッ」という声だけで、飛び起きます。

自分がちょっとでも気を抜いたらこの子の身に何かあるかもしれない。子育てをしていく中で、母親は子どもを守るために、あらゆるリスクを考えるようになります。必死になって身を削り、命がけで子どもの健康と笑顔を守り続けているのです。

母親たちのイライラの根っこには、そんな努力があるのです。「イライラする自分」は、命がけで子どもを守ってきた結果生まれた、努力の証なのです。

男性の私から見ると、やはりそれはとても崇高なことで、本当に尊敬でしかない。すべてのイライラするお母さんたちに、心からの拍手を送りたいです。

そんなお母さんたちに伝えたいのは、「自分を大切にしよう」ということ。

家事や育児を1人で抱え込むのではなく、もっと家族や友人など周囲の力を借り、自分をいたわる時間を取ってほしい。そうすると、子どもに笑顔を向けられるゆとりが生まれます。安心して、「まずは自分を大切に」。子どもと過ごす限られた時間のなかで、それを忘れずにいてくださいね。