見守る子育て 最終更新日時:2025.04.24 (公開日:2025.04.22)

「国語が苦手」は本当?才能タイプから考える子どもの読み書きとの付き合い方

「国語が苦手」は本当?才能タイプから考える子どもの読み書きとの付き合い方

「うちの子、国語が苦手で…」「文章を読むのが嫌いみたい」そんな悩みを抱えている親御さんは少なくありません。でも実は、その“苦手”の正体は、子ども自身の才能タイプと学び方の相性によるものかもしれません。

このコラムでは、私自身の現場での実感を込めて、才能タイプという視点から、子どもが国語や読み書き、漢字に苦手意識を抱えてしまう背景を丁寧にひもときながら、どのようにすれば本来の力を伸ばせるかをお伝えしていきます。

    Contents

  1. 「国語が苦手」の始まりは、本人のせいではない
  2. 苦手と感じる「きっかけ」を見極める
  3. 「苦手」は学びのスタイルのミスマッチ
  4. 才能タイプを知れば、読み書きはもっと身近になる
  5. 「やり方が合っていないだけ」と気づけたときに
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

「国語が苦手」の始まりは、本人のせいではない

「国語が苦手」「文章が嫌い」と言う子どもたち。でも、それは本当に“本人の資質”なのでしょうか?

子どもたちは、与えられた読み方や教えられ方が自分の才能タイプに合っていないだけで、「できない」「わからない」「嫌い」と思い込んでしまうことがあります。たとえば、視覚や身体感覚をよく使うタイプの子が、じっと座って黙読することを求められたらどうでしょう。そもそもその姿勢自体が苦手なので、「読む」という行為そのものに抵抗感を持ってしまっても不思議ではありません。

大人が“普通”だと思っている教材ややり方が、子どもにとっては高すぎるハードルになっているケースは少なくありません。大切なのは、まず子どもの反応を丁寧に観察すること。面倒くさい、つまらない、やりたくない——その言葉の奥には「自分に合わないやり方」が隠れているかもしれません。

 

苦手と感じる「きっかけ」を見極める

子どもが国語や文章に対して苦手意識を持つようになるのには、きっかけがあります。たとえば以下のような場面はありませんか?

  • 漢字練習プリントを嫌がる(例:同じ字を10回ずつ書かせる宿題)
  • 読書に集中できない(例:文字が小さく詰まったレイアウトの本)
  • 読み聞かせの最中にそっぽを向く

こうした場面で、「集中力がない」「やる気がない」と評価してしまうのは早計です。実際は、与えられた方法や教材がその子の才能タイプに合っていないことが原因ということもよくあるのです。

たとえば視覚優位でビジュアルに敏感な子は、ページ全体が文字で埋め尽くされた本を前にすると「うっ」と身構えてしまうことがあります。この場合、文字を大きく拡大したり、1ページあたりの情報量を減らしてみるだけで読みやすさが劇的に変わることも。

また、体を動かすのが好きな子には、「座って静かに読む」という学習スタイル自体が合っていない可能性があります。むしろ、歩き回りながら話を聞く方が内容を吸収できたり、物語の中で出てくる動きを真似しながら理解が深まるというケースもあります。

 

「苦手」は学びのスタイルのミスマッチ

ある男の子は、図鑑や動画を通して世界を知るのが大好きでした。そんな子に、行間が狭く文字の小さい“読書教材”を与えたところ、まったく興味を示さなかったといいます。

しかし、その教材を拡大コピーし、見開きの半分だけを見せるようにしたところ、彼はスッと読めるようになったそうです。これは単なる「読書量の問題」ではなく、文字サイズ・行間・情報量といったビジュアルの調整によって、“読む気持ち”を引き出した結果と言えるでしょう。

また、慎重なタイプで初動に時間がかかる子どもには、「とりあえず全部読んでみて」は逆効果。まずは導入部分やあらすじだけを紹介し、興味を持ってもらうことで、その後の読み進めがスムーズになります。最初から全体を読ませるのではなく、段階的に渡していく「スモールステップ」の工夫が、子どもに安心感を与えます。

このように、子どもが「読みたい」「わかりたい」と思える状況をつくることが、苦手意識を取り除く第一歩なのです。

 

才能タイプを知れば、読み書きはもっと身近になる

才能タイプの理解は、子どもへの教え方・接し方を大きく変えます。たとえば:

  • 対人関係志向が強い子:最初の数分は親が一緒に取り組むだけで、学習への意欲が上がる
  • ひとりで集中したい子:学習の方針だけ共有したら、あとは任せることで能力が発揮される
  • 慎重で不安の強い子:最初の1行だけ読ませて「これならいけそう」と思わせる配慮が必要

そして、親自身が自分の「読むスタイル」を理解することも重要です。たとえば、縦書きより横書きが読みやすい、目的が明確だと読みやすい、音声で内容を把握してから読む方が得意、などです。自分のスタイルを振り返ることで、子どもの学び方への理解も深まります。

最終的に目指すのは、子どもが「読めた」「わかった」と実感できること。それが、国語や文章に対するポジティブな記憶となり、自発的な読み書きの力へとつながっていきます。

 

「やり方が合っていないだけ」と気づけたときに

子どもが文章を読まない、国語が嫌い、漢字を覚えたがらない——その裏には、必ず理由があります。

その多くは、「できない」のではなく「やり方が合っていない」だけ。大人がほんの少し視点を変え、子どもの才能タイプに合わせて環境や関わり方を整えるだけで、子どもたちは読み書きを自分の力として受け取るようになります。

「うちの子、国語はちょっと…」と感じている方こそ、今日から少しずつ関わり方を見直してみてください。

それは子どもにとって、“国語との新しい出会い”になるかもしれません。