子育て相談を受ける中で、年々実感するのが親御さんたちの「時間がない!」というお悩みです。
共働きが当たり前になっても、社会のシステムや、国の子育て支援策などなかなかバージョンアップしない中で、親の子育てに対する負担はどんどんと重くなり、心のゆとりを持って子どもたちを見守るには程遠い現状があります。
子どもへの熱い想いがあるけれど、それを叶えるための時間をどう捻出したらいいのかわからない、仕事も子どもも大事にしたい。
今回はそんなお悩みを抱える方へ、子どもが自分で学ぶ力を持ち、その分だけ親にゆとりが生まれるという「時短子育て」の考え方を提案したいと思います。
秘訣は「自分で学ぶ力」を育てること
「時短子育て」のポイントは、親が子どもに関わらなければならない時間をできるだけ短くするということです。
しかも短くしながらも、子どもが自ら動き、幸せになっていける、そんな子育てを実現しましょう!という提案なのですが、このためには、親側だけが努力してもうまくいきません。
大事なのは「子ども自身」です。なぜなら本人に動いてもらわないことには、時短にはなり得ないからです。
まず、子育ての中で親御さんが最もエネルギーを注ぎ、最も疲れることといえば「勉強」 が挙げられるのではないでしょうか?
ここで勉強とは、学校・塾のペーパー学習に限らず、社会的なルールを学ぶなどの日常での学びをも含めた「学ぶ」ということです。
これらを1から10まで、すべて横について教えていたら、いくら時間があっても足りないですよね。
このときのポイントは、「スモールステップをいかに作ってあげるか」が重要になってきます。
知らないことは教えてあげなければなりません。
でも、一度教えたら子どもはわかるようになります。わかったら、今度はそれを使わせて、実際にやってもらうことが重要です。
「できたね、今どういう風にやったのか、おさらいしてごらん」と声をかけたり、最後に「もう1個やって確認しておこうか。」と、確認をしましょう。 そして翌日にも、「昨日教えたあのやり方覚えている?」と、もう1回やってもらう。またできたら、「ママはもう見なくても、これに関してはできるよね」と、できることは子どもに渡し、委ねていく。
これを繰り返し、委ねるものをどんどん増やしていって、レベルを上げていきましょう。
今回は特に委ねていく中で、優先的に意識して欲しい自分で学べる要素として5つの力をご紹介します。
時短子育てで意識したい「時間の感覚」
例えば、本人の感覚では15 分アニメを観ていたつもりでも実際には25分だったとか、 YouTubeを気がついたら1時間観ていた、など自分の行動と実際の時間がリンクできていない子は多くいます。
逆に、1日の時間を上手に計画的に使って行動している子は、時間感覚を持っているといえます。
5分はどれぐらいの長さで、その時間があれば自分はこういうことができる。
1日の中で、ご飯を食べる時間、お風呂に入る時間、寝る時間など決まった時間までにどこで何をすればいいのか見通しが立つと子どもは行動しやすくなります。
「時短子育て」において、意識的に幼少期から時間と自分の行動を結びつける練習をしていきましょう。
予定を一緒に考えることで身に付く「見通しを立てる力」
何かをする時、とりあえずやってみるのではなく、まずは具体的に何が必要でどういう手順で、大体どれぐらいの時間がかかるのか、という見通しを立てる意識を持たせましょう。
もちろん最初はできませんから、親子で一緒にやって少しずつ感覚をつかむと良いですね。
宿題をやるにも、「じゃあ宿題をやろう」ではなく、「今回全部でいくつあって、どれ位時間かかりそう?ちょっと予想してごらん。」「何時から始めたらご飯の時間に間に合わないかもしれないから、念の為さらに15分前倒してこの位から始めたら良さそうだね」など、生活の中で、こまめに予定を立てる意識を育んであげましょう。
親はきっかけを作り、予定の計画は子ども本人に立てさせてあげる、ということを意識してみてくださいね。
記憶させる回路を育てるヒント
多くの子は、知識を得てもそれで終わってしまい、明日には忘れてしまいます。1 週間後には、調べたことさえも忘れてしまいます。
では自分で勉強ができる子はどうするのかといえば、知った以上覚えておこうと、記録に残すのです。
わざわざ時間をかけて、知識を得たのだから失ったらもったいないと思うわけです。忘れそうならメモに残しておくなどのひと手間によって記憶に残して、次に考えるときにはまず自分の記憶から引っ張りだして、それで駄目だったらまた調べるということを行います。
親御さんはぜひ「忘れたらもったいないから、記憶に残そうね」と声をかけて、「よし覚えるぞ!」という場を作ることを意識しましょう。
覚える力が上がれば、学習にかかる時間は短縮されていきます。すると子ども自身も楽になるので学習意欲も上がりやすくなりますよ。
間違えたときの対処法
例えば、プリント学習で答え合わせしてバツになった時。多くの子どもはまずふてくされます。もしくは怒ったり泣いたりします。自信をなくす子もいるかもしれませんね。
子どもにとってバツは「もうダメだ」「終わった」なんです。バツの後があることを知らないんですね。
でも、親御さんにバツの後を教える意識がないと、バツでふてくされている我が子を見て、自分が間違えたんでしょ、とさらに責めてしまう場合があります。
嫌だと思っているところをさらに責められたら、ますます嫌になります。バツを見たらなかったことにしたいと、自分で学ぶ力を遠ざけていく方向へ回路が動いてしまったらもったいないですよね。
上手に声かけをされる方は、バツがついたら「どこが違ったのかがわかれば、そこを直せばマルに変わるよ。今のうちにマルに変えちゃおう」と、知らないところ・わからないところが見つかって良かったね、ということを伝えています。その上で、バツをバツのままにしておくことは良くないことだということも同時に教えています。
バツになった時、間違えた時の対処法はぜひ早めに身に付けさせてあげましょう。可能なら幼児期からバツはマルに変わるという体験と意識を育んであげて欲しいなと思います。
報告・相談がもたらす効果
報告・相談は勉強に限らず、とても大切です。
親が1番気になるいじめや、対人関係のトラブル、学校におけるトラブルなどがあった時も、早めに教えてくれる関係を親子で築きたいですね。
でもその意識は、親に報告や相談すれば、より良くなるという安心感がないと成り立ちません。
話しかけたら絶対に聞いてくれるという信頼感。忙しくて今聞けないのなら、何時になったら聞けるから、その時必ず教えてね、と声をかけて後できちんと話をきいてみましょう。
そうやって、きちんと聞いてもらえる体験を重ねると、何かあった時には報告しようという意識が自然と出てきます。
そして親側にとって、我が子が報告・相談をきちんとしてくれるとどんな良いことがあるかといえば、いちいち目を光らせる必要が無くなってきます。
何かあったら言ってきてくれるという安心感があれば、親の方が常にアンテナを張らなくて済むようになるんですね。これは気持ち的にもすごく楽になります。
見守る子育てが推奨する「時短子育て」とは
以上、「時短子育て」を行う上で、優先的に身につけさせたい5つの力についてお話しをしてきました。
これらを意識的に子どもたちに手渡していくことで、自ら動きだし自ら学べる力が育まれていきます。するとその分だけ親御さん自身が手を離していけるようになります。
家の中で一緒にいても、自分の時間をまず自分のために使った上で、途中途中でお子さんの様子を見たり聞いたりするだけで、回り始めるのです。
まず、親側が意識を変えてみましょう。
お子さんができることを見つけ委ねる、それを小さく小さく始めていって欲しいなと思います。
その先に、子どもが自ら学び始め、結局親の手がかからなくなっていく「時短子育て」ができるようになっていきます。
さらに信頼があるからこそ親子の会話が深まり、時間は短くとも心が通じ合っているという状態が手に入ってきます。
是非みなさんがこの「時短子育て」に踏み出してほしいと思います。