見守る子育て 最終更新日時:2024.06.15 (公開日:2024.06.16)

【小学生で英検2級?】最新の中学英語事情とは?

【小学生で英検2級?】最新の中学英語事情とは?

2020年から、小学校で英語が正式な教科になり、また中学や高校でも、2022年からは、習う英単語数が以前の1.5倍に増やされ、教科書の中身が一気に増えています。

日本人の英語力不足に関しては、何十年も前から言われていましたし、僕自身も英語力不足を問題視して、30年以上も経ってしまいました。コンピュータのプログラミングもベースはやはり英語言語で設計されていて、もう英語を使いこなすということは、僕たち世代はもちろん、子どもたち世代はより避けて通れなくなっています。このような流れから、日本として、英語教育を何とかしなきゃいけないと、力入れることの方向性は間違ってはいません。ただ、小学校や中学校の教育を見た際、実は英語にまつわることで、かなり深刻な問題が生じてしまっています。

今回は、「小学生で英検2級?最新の中学英語事情とは?」と題して、この英語教育にまつわる問題を取り上げたいと思います。

    Contents

  1. 中学1年の1学期で落ちこぼれる子どもたち
  2. 小学校で英検2級以上の子も困っている
  3. 小中連携がいつまでも進まない残念な国、日本
  4. 英語力を上げていく
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

中学1年の1学期で落ちこぼれる子どもたち

最初の問題は、小学校で英語が教科化されて以降、小学校での英語はそれなりに楽しくやっていたはずなのに、中学に入った瞬間から全然授業についていけない子が急増しています。

一体、何が起きているかというと、まず英単語の問題です。小学校の英語は、教科書の中に英単語が約600700ワードぐらい載っていて、中学校では3年間で大体16001800ワードが載っています。以前は、1200単語ぐらいだったので、1.5倍になっているんですね。語彙力を増やすことは語学において必須ですが、問題は、中学の英語が、小学校の英語600700単語を習得してきた前提で始まっているという点です。

小学校の指導要領では、小学校の英語授業の目的は、英語に親しむ、英語を学ぶことに前向きになる、英語の世界世界に触れるということを重視しています。

そして、中学の英語においては、その英語力・表現力・読解力というものを高めていくことを目的としています。

つまり、小学校での英語学習は、中学校の指導方針の前倒しではないということが指導要領にはっきりと書かれています。

しかし、中学の英語教員が“これくらい、やってきたでしょう”と、中1の1学期で、いきなり僕たちの世代が中2ぐらいでやったようなことを平気でやったり、教科書にも出てきてしまったりということがあります。

小学校事情をわかった上で中学の英語連携を考えている教員であれば、うろ覚え状の子どもたちに、小学校英語の復習をしながら中学の教科書が繋がるように教えていきますが、これはなかなか難しく、中11学期の時点で既に英語が嫌になる子が急増しているという困った問題が起きています。

 

小学校で英検2級以上の子も困っている

そしてポイントの二つ目です。中学ですぐに落ちこぼれてしまう子がいる一方で、小学校の間に英検2級や準1級を取って、英語の力を非常に高めた子たちも増えています。

つまり、中学に入学した段階で、英語が苦手な子と、英語が使いこなせる子の、二極化がどんどん進んできています。

教室の中で二極化された生徒像ができているということは、授業の照準をどこに合わせばよいのか、先生の方も非常に難しくなっているのです。

日本の場合は、上に合わせることはしませんから、英語がわかっている子たちからしたら、学校での英語の授業はつまらなくて仕方がなくなるわけです。

すると、せっかく家庭の努力で小学生の間に英語力をつけてきたのに、中学で英語力が阻害され、学校の授業が面白くなくなってしまうという問題も起きているのです。

ちょっと英語ができることで、中学生活を楽しむことができないなら、英語に力入れている家庭が、私立中学受験の方向に舵を切るという選択は、仕方がないかもしれません。

 

小中連携がいつまでも進まない残念な国、日本

英語学習において中学校のあり方には問題があります。ただ、中学校の先生が悪いのかというと、少し違います。

それは、文科省にも責任があるのです。文科省の政策で、例えば「幼小連携」といって、幼稚園・保育園と小学校を連携して、いわゆる“小1プロブレム”や“小1の壁”に取り組んだり、「中高連携」で学習に関する取り組みをしていますが、なぜか「小中」は連携していないのです。

例えば小学校の先生が、子どもが中学進学をするにあたり、どのような学びの仕組みで、卒業までどういった力を育んであげれば、上手く中学へ送り出して挙げられるのかということを、なかなか学ぶ機会はありません。逆に中学校の先生が小学校の実態を勉強しに行き、どういった状態の学力の子たちが来るのか、それを踏まえて中学教員は4月~6月を、どのような受け入れ階段で迎えれば良いのか、を知ることができない、など小中の情報交換の機会は少ないように思います。

その他に免許の問題も挙げられます。小学校の先生と中学以上の先生は、教員免許が違うため、中学の先生が小学校に教えに行くことはできません。逆に小学校の先生が中学校に先生として入って実態を学ぶこともできません。

これらの問題を乗り越えることは大変です。教育委員会がリーダーシップを発揮して、自治体の区長・市長がきちんと教育の実態を勉強し、その変化を後押しする、そういう動ける市長や市会議員たちを、選挙民である市民が投票できちんと選んで、自分たちの町の教育水準を高めるために、全員が連携して取り組まないと変えていくことは難しいのではないでしょうか。

上記のような背景から、英語教育に関して、改革には時間がかかりそうで、学校に依存せず、親が頑張るといった状況になっているように思います。地域の色々な学びのツールやサービスも活用しながら、何とかしていくしかない現状があるのですね。

まずは、小学生のお子さんが中学に上がったらどんなカリキュラムで英語の力を求められるのか、知っておいた方がよいかもしれません。小学校の先生が指導しなくとも、親の方で「でもこれ覚えておかないと中学校で困るから覚えておこう」と、書ける単語はちょっと増やしてあげたり、中1に向けて使えるドリルなどを参考にしながら、中学への進学をスムーズにする努力はした方がいいと思います。

 

以上、小学校の英語義務化から始まって、中学英語の実態の話をしましたが、今のところ明るい兆しが見えません。しかしながら、この厳しさを踏まえた上でやるしかない、ということをお伝えしたくて、今回はあまり救いのないかもしれないですが、知っておけば腹が決まるかなと思ったので、赤裸々に話をさせていただきました。最後に、今回の見守る子育てのコツです。

 

英語力を上げていく

学校教育ももちろん大事ですが、100%学校に依存するのではなく、家庭でも夫婦のコンセンサスをとりつつ、全員が手を携えて、子どもたちに英語教育を行って欲しいと思います。少なくとも英語嫌いにさせないようにだけは頑張り、彼らが世界で将来活躍できるその道を、一緒に作っていきましょう。