見守る子育て 最終更新日時:2024.05.08 (公開日:2023.11.30)

一流のモノや体験よりも影響大!?子どもの能力を伸ばす親の関わり方

一流のモノや体験よりも影響大!?子どもの能力を伸ばす親の関わり方

子どもの能力開花はかけたお金の大きさで決まるわけではありません、もっと大切なポイントがあるのです。

    Contents

  1. 「ものや体験」よりも「親の関わり」が学ぶ意欲を育てる
  2. 本当に必要なところに必要なだけ使う「生きたお金の使い方」
  3. お金を使わなくても子どもの能力が伸びる親子の関わり方
  4. 日頃の会話を意識して「人の話を聞く力」「自分の意見を発言する力」「計算力」を培う
  5. 気になるものがあったときに「調べようとする力」を培う
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

「ものや体験」よりも「親の関わり」が学ぶ意欲を育てる

子どもの成長は喜ばしいことですが、年々増えてゆく教育費は多くの家庭にとって悩ましい問題。子どもの教育を考えるとき、お金の問題は切っても切り離せません。

教育費には糸目をつけず、わが子にとって「よさそうなもの」をどんどん与えるご家庭もあれば、家計の都合で十分な教育を与えてあげられないと悩むご家庭と、さまざまです。

たしかに、お金があればモノや体験を与えられるのは事実です。一方で、子どもの能力を見つけ最大限に生かすために必要な、“3つのチカラ”でもお伝えしているように、親から見て「教育によさそうなモノ」をあれこれと与えられている子どもがみんな、成績優秀で学力の伸びが素晴らしいかというと、意外とそうでもありません。子どもの頭のよさや成長意欲は、モノや体験の量に比例するわけではないのです。

子どもの能力を伸ばすために本当に大切なのは、お金で得られるモノや経験よりも「親との関わり」です。

「知りたい」「学びたい」と子どもの心を動かし、子どもの能力を伸ばすのは“人との関わり”ですが、親こそが誰よりも身近で大切な存在ですから、“親との関わり”がとても大切なのです。

「子どもの能力の高さ」と「かけたお金」が比例しないのは、お金をかけることによって、かえって親との関わりが減ってしまうという、本末転倒な状況が生まれやすいからなのです。

たしかに、お金をかけずに、親だけが働きかけて子どもの好奇心を満たし、能力を育てようとすることは、忙しい現代の親事情を考えると無理があるでしょう。子どもと関わることはもちろん、子どもに教えるために親が知識を仕入れることにも、時間とエネルギーが必要だからです。

「してあげたいこと、伝えてあげたいことはたくさんあるけれど、自分だけではとても手が回らない」
「教えてあげられる自信がない・・・」
「毎日忙しいから、子どもに目を向け続ける気力が続かないーー。」

私も働く親として、こうした事情はとてもよくわかります。親だけが子どもを背負い続けるなんて、できるわけがありません。もちろん、外部のサービスや市販教材などの助けを借りていくことは、誰にとっても必要です。

ただし、教育サービスやツールを使いつつも、本当に大事なのは「親子の関わり」だということを忘れないでください。

逆にいえば、子育てにあまりお金をかけられない状況にあったとしても、親がわが子の姿、わが子の心の動きに目を向けて、「この子の能力を伸ばしてあげるには、どんな関わりが必要か」を考えながら、日々接することができれば、子どもの能力を伸ばしていけるのです。金銭的な条件が子どもの成長を決めるのではないということは、ぜひ理解しておいて欲しいと思います。

本当に必要なところに必要なだけ使う「生きたお金の使い方」

今のわが子をよく見て、子どもが欲するものや体験をさせてあげられているご家庭は素晴らしいですね。

ただ現実には、そのような有意義なお金の使い方ができているご家庭は、そう多くはありません。部屋に輸入ものの知育玩具があふれていたり、さまざまな習いごとをさせていたりと、たくさんのお金を使っているご家庭が目立ちやすいという事情はあるにせよ、与えすぎの子育ては、期待したような成長にはつながりにくい傾向があります。

「うちは、子どものために高価で一流のものを与えているから」と、いかにお金を使ったかに満足するような親はさすがにいないでしょうが、「お金を使って子どもにモノや体験を渡してあげる」という行為そのものに親としての達成感を覚えてしまい、「子どもの心がどれぐらい動いているか」「子どもがどれだけ喜んでいるか」という肝心なことが見えていないケースは少なくありません。これが、お金を使って得られるモノ・体験の怖さです。

「一流のもの」を与えることよりも「子どもの心に響くもの」を与えることのほうが、子どもの可能性はぐんと広がるのです。なお、この話は、「一流のものには子どもの心を動かす力があるから、できるだけ本物に、一流のものに触れさせてあげたい」という考え方を、否定するものでは全くないということにも留意してください。

大切なのは、子ども自身の心、子ども自身の感じ方だということです。単純にものや体験を与えることよりも、今その子が欲しているものが何か、子どもの心が何に動いているのかという「子どもの心のときめき」を親が理解し与えることで、成果は大きく変わります。

モノの値段が子どもの心のときめきを決めるわけではないのです。

 

お金を使わなくても子どもの能力が伸びる親子の関わり方

それでは、「子どもの能力を伸ばすために大切な親子の関わり」とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。習い事や知育玩具にいくら使ったのかということよりも大切な、子どもと関わる上での視点をいくつかお話ししたいと思います。

子どもに「自分で選ぶ経験」で責任感や自立心を培う

子どもに「自分で選ぶ経験」を積ませることで、そこから得られるものは大きくなりますし、責任感や自立心も育ちます。
たとえば子どもと一緒にスーパーに行ったとき、「今日はお鍋にしようと思うんだけれど、野菜は何を入れようか?」と子どもに尋ねて、選ばせてみるとします。親はその時、何を選べばいいか、どう選べばいいかを最初から教えるのではなく、子どもなりに選ぶ様子を見守るようにする。

「へえ、この野菜を選ぶんだ」「そんなところを気にするんだ」などと、子どもの様子からわが子のことを改めて発見する感覚です。もしも子どもが「どれを選んだらいいの?」と答えを欲しがったら、「どれを選ぼうかねぇ。お鍋に入っていて、最初に食べそうな野菜はどれ?」などと、一緒に考えるような空気で、本人なりに決めていく手伝いをしてあげるのもいいですね。

こうした関わりはまさに、本人の意識と行動のありのままを認めています。選んだ野菜一つひとつが、「これがいいってどうやって決めたの?」「どこが気に入ったの?」という会話を可能にしてくれる、自分で選んだ本人の体験そのものとなるのです。

親にとっては「認める」「見守る」「待つ」の練習になり、子どもにとっては、「自分が決めた野菜が今夜の夕食になる」という心に響く経験となります。

習い事も同じです。
親が子どもに英語を習わせたいと思っているとして、何も知らない子どもが自分から「英語を勉強したい」と言い出すはずはありませんから、最初は親が「英語を勉強してみない?」と出合わせてあげるのが普通ですね。出合って初めて、子どもも「やりたい」「やってみる」という選択の機会が得られます。始めたとして、その後続けていくというのも日々の「選択」です。

手段にもいろいろあります。英会話教室、通信教育、市販のドリルなど、英語を学ぶにもどんな手段があるのかを見せてあげ、触れさせてあげることで、子どもなりに選ぶ過程に参加させてあげたいですね。

選ぶというのは、「やる」か「やらない」かの2択などという単純な話ではありません。「やってみる」という選択に至るまでの子どもの心の動きは何段階もありますし、子どもによって気にするポイント、知りたいポイントは違います。その心を認め、見守ることが大事なのです。

このようにして、子どもの選択や判断を認め、見守る関わりを大事にすると、取り組んだときの習熟度も変わります。
興味を持ったことに、自分の好きな方法で取り組みたい。それは、大人でも同じですよね。

日頃の会話を意識して「人の話を聞く力」「自分の意見を発言する力」「計算力」を培う

たとえば、親の今日の出来事を話すことも、子どもにとっては学びの場のひとつ。
「お母さんね、今日スーパーに行ったの。そうしたらアボカドが1個88円で売ってて、『安い!』と思って3個買ったけど、皮をむいたら2個が傷んでたの。やっぱりいつもの128円のにしたらよかった」というお話一つでも、理解する力や人の話を聞く力が育ちます。

計算力について言えば、計算が得意な子のほぼ全てが、親子で数遊びをする体験がその後の計算力につながっています。特に口頭でする暗算練習は、親子で楽しみながら計算力を高めるのにぴったりです。

「1+2は?」「3」、「3+2は?」「5」、「5+2は?」「7」、「7+2は?」「9」…え、これいつまで続くの?」

なんていう会話の積み重ねでも、計算力を培うことができ、これも親子の日常の会話で育てることができます。

気になるものがあったときに「調べようとする力」を培う

たとえば、道端に見たことがない草花を発見したときや、ニュースを見た子どもが「移民って何?」とわからない言葉を聞いてきた時は、家にある本や図鑑、インターネットなどで一緒に調べる習慣をつけましょう。
「一緒に」調べるということがポイントです。「調べてごらん」と「一緒に調べてみようよ」とでは、子どもにとっては全く異なる体験だからです。親と「一緒に」することで、子どもは新しいことにも安心して取り組めますし、そのこと自体が親との「遊び」となります。

そして、調べる「遊び」を一緒に何度も楽しく重ねていくうちに、「気になることは本や図鑑、インターネットで調べればいいんだ」という知識や習慣が、自然と身についていきます。

また、一緒に調べてあげたいけれど忙しくて手が離せないときなら、「ちょっとノートにメモしておいて」とお願いして「調べるノート」を作らせたり、「今のところにこれを貼っておいて」と付箋を渡してあげるといいですね。そして時間ができた時に、一緒に調べる。また週末に、一緒に図書館へ調べ物をしに行くのもいいですね。

ここまで「子どもの能力を伸ばすために大切な親子の関わり」として、3つの関わり方を紹介しましたが、いずれもお金が必要なものではありませんでした。当たり前ですね。子どもの心の動きを認めて、見守り、応援する親の関わりは、お金で手に入るものではないのですから。

こうした親の関わりを大事にした上で、お金を使う。そうすると、本当に必要なところに必要なだけ使う「生きたお金の使い方」ができるようになります。

子どもの心を動かすのは、何より「親子の関わり」です。ぜひ、今日から実践してみてはいかがでしょうか。