見守る子育て 最終更新日時:2024.01.09 (公開日:2023.11.30)

「学びたい」という子どもの気持ちを伸ばすために親ができる唯一のこと

「学びたい」という子どもの気持ちを伸ばすために親ができる唯一のこと

「勉強や運動をがんばってほしい」「苦手なことにも前向きにチャレンジしてほしい」。

きっと、どの親御さんも、お子さまに対して思っていることでしょう。
できることならば、「学ぶこと」に対して積極的な子どもになってほしいですよね。

”学ぶ喜び”を感じられる子どもに育てるには、いったい、親はどのようにわが子と向き合うのが望ましいのでしょうか。小川大介先生にお話を伺いました。

    Contents

  1. 学ぶ喜びを知ることで、学ぶことが楽しくなる
  2. 「なぜ勉強しないといけないの?」と聞かれたら
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

学ぶ喜びを知ることで、学ぶことが楽しくなる

本来、”学び”とは能動的なものです。“みずから学びたい”という思いを育んであげることが、子どもが成長していくうえでの重要な基盤となります。勉強の成果よりも、「どのように勉強を好きにさせてあげるか」を最優先にすることが大人の務めです。

「学ぶことが好き」とは、学ぶ喜びを知っていることだといえます。
知らないことを「知る喜び」「分かる喜び」「知識が増えていく喜び」「知識を使う喜び」、そして分からないことを他者に教えてあげて喜ばれるなど、「知識を使って誰かの役に立つ喜び」も学ぶ喜びに含まれるでしょう。

学ぶ喜びを知ることで、子どもは、学ぶことが楽しくなります。

ただし、こうした喜びをあれもこれもすべて味わわせることが大事なのではありません。わが子が好きなものや得意な分野に基づいて「学ぶことって楽しいな」と感じられる体験を育てていくことが大切です。

学びの場は、学校だけではありません。
学ぶ喜びを育む場は、家庭、学校、地域社会という3軸があることを忘れないでください。たとえば、学校での学びが楽しくないようであれば、家庭学習を工夫したり、習い事や地域での活動を分厚くしたりすれば良いのです。

3つの場所のどこかで学べれば良いという視点を持ち、本人が生き生きとできる分野のなかで学びの機会を持たせてあげましょう。そして、本人が手応えを感じるためにも、好きなことに取り組んでいる最中に、その頑張り方を認め、褒めてあげてください。

子育てというのは、何かを与えることよりも、「本人がやりたいという気持ちが動いたときに、行動につながるようにサポートする」、その繰り返しが大切です。その子をしっかりと見たうえで、その子に必要な適切な関わり方を選んで、手伝ってあげれば良いのです。

外から見える成績や偏差値などの「カタチ」だけにこだわるのではなく、子どもをよく観察し、「学びたい」、「できるようになりたい」という子どもが持つ本来のチカラを信頼して、伸ばしていきましょう。

 

「なぜ勉強しないといけないの?」と聞かれたら

「なぜ勉強しないといけないの?」という質問を子どもから受けたことはありますか?

そんなときは、まずは「何があったの?」と聞いてみてください。なぜなら、子どもが「なぜ勉強しないといけないのか」という問いを発する時は、「勉強する理由そのもの」を聞きたいわけではない場合がほとんどだからです。

勉強というものに対して「嫌な思いをした」「不安を感じた」、または、「何かを制限されている気がして、不快感を覚えている」サインの可能性はかなり高いでしょう。また、「勉強」というこれまで惰性的に取り組んできた事柄に、何かしらの違和感を覚え始めたのかもしれません。

勉強の仕方がそもそも分かっていない可能性もあります。大事なことは、子どもに今何が起きてるのかを汲み取り、寄り添うこと。本人が疑問に感じる点や、困っていることを解決するスタンスに立って「なぜ勉強するのか」を親子で一緒に考えるようにするとよいでしょう。

寄り添うことで、「勉強にはやり方があり、そのやり方を知っていくことで、勉強した分だけ成果が上がるのよ。あなたに勉強の仕方を教えてあげずに今まできた。わからないことをやらされてしんどかったよね。ごめんね」と、謝りの言葉が出て来た親御さんもいらっしゃいます。

この方は、「今勉強がうまくいっていないのは、本人の能力や態度の問題ではなく、技術と知識の問題だ」ということに気づけたことで、「教えてあげられなくてごめんね」とわが子の痛みに寄り添う言葉が自然と口に出来たそうです。そして、「やり方が分かれば、これからまた伸びるから安心していいんだよ」という安心感を本人に渡すことの大事さにも気づけたからこそ「勉強した分だけ成果が上がるのよ」という言葉も伝えられたのですね。

子どもへの寄り添いができたら、さらに、学ぶことの喜びや、勉強がもたらしてくれるものについて親自身が言葉を持ち、子どもに教えてあげられるといいですね。

「勉強したら、世の中についてわかることが増えて毎日が面白くなるよ」
「友だちとの会話が楽しくなるよ」
「まわりから頼られて、『ありがとう』って言ってもらえることも増えるよ」などと。

人は、知識を獲得し、その知識を使い、問題解決ができたときに、「嬉しい」や「安心する」という喜びを感じます。それは子どもも同じです。

子どもも、分かることが増えたり、問題が解けたりすると、みんな笑顔で喜びます。だからやっぱり、子どもたちは「学びたい」という欲求があるのです。

そんな子どもの「学びたい」気持ちを伸ばして行きたいですね。