才能タイプ子育て 最終更新日時:2026.10.30 (公開日:2026.10.30)

勉強時間を減らしたら、成績が上がった

勉強時間を減らしたら、成績が上がった

――中学受験で起きている「努力の変換ロス」の正体

成績が下がると、たいてい「やること」が増えていく

成績が下がってきたら、解き直しを増やす。苦手な単元をもう一度やる。勉強時間を増やす。場合によっては、個別指導や家庭教師を加える。

できていないのだから、できるようになるまでやる。多くの親御さんが取る考え方です。

でも僕は、勉強量を増やす選択肢を「一番最後」に考えます

理由は、

成果が出ていない理由が分からないまま量を増やすと、うまくいっていないやり方まで繰り返すことになるからです。

これは、中学受験の家庭でかなり頻繁に起きています。

    Contents

  1. 「困っていること」が同じでも、「困っている理由」は違う
  2. 同じ「計算ミス」でも、理由はまったく違う
  3. 「考えない子」ではなく、「まだ見えていない子」だった
  4. 「正しい方法」でも、原因を見ずに使えば外れる
  5. 子どもの学習は、「量」より先に「質」を整える
  6. 2週間後、机に向かう時間は減りました
  7. 子どもだけでなく、親の「頑張る場所」も見直します
  8. 親も頑張っているからこそ、「どこを頑張るか」が大事です
  9. 「もっとやらせる」の前に、一度だけ考えてほしいこと
  10. ここまで頑張ってきた親子へ
小川  大介

教育家・才能タイプ子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

「困っていること」が同じでも、「困っている理由」は違う

たとえば、

✓ 計算ミスが多い → 「もっと丁寧に。見直しをしよう」

✓ テストで時間が足りない → 「もっと速く解こう」

✓ 一度習ったことを忘れている → 「復習を増やそう」

✓ 難しい問題になると手が止まる → 「もう少し粘って考えよう」

✓ なかなか勉強を始めない → 「時間を決めて習慣にしよう」

どれも、おかしな対応には見えません。実際、それで解決する子もいます。

でも、子どもの答案を見たり、本人に話を聞いたりしていると、

「手の打ち方はそこじゃない!」

ということが、本当によくあります。

不注意による計算ミスだと思っていたら、注意力の問題ではなかった。時間が足りないから急がせようとしたけれど、解く速度の問題ではなかった。復習不足だと思っていたら、回数の問題ではなかった。

親から見えている「困ったこと」は、結果として表に出ている現象です。その解決には、もう一段階奥にある、その現象を生んでいる理由をつかむ必要があります。

この記事でお伝えするのは、特別な勉強法ではありません。

「頑張っているはずなのに、なぜか伸びない」時、その子の中で何が起きているのか。

そこを、どう捉えて、どう結果を改善するかという話です。

同じ「計算ミス」でも、理由はまったく違う

あるお子さんは、計算ミスが多いことを心配されていました。

普通なら「もっと丁寧に」「最後に見直そう」となりますよね。

ところが、答案や実際に勉強している姿まで見ていくと、その子の場合は注意力の問題ではなく、視界の使い方とプリントの位置、本人の姿勢が噛み合っていないことが見えてきました。見落としているのではなく、そもそも「見えていなかった」のです。

別のお子さんでは、頭の中の処理が速く進みすぎて、手の動きが追いついていませんでした。その子に「もっと筆算を書こう」と勧めると、字体の崩れた数字がたくさん目に入り、かえってミスが増える可能性がありました。

表に出ている現象は、どちらも「計算ミス」です。

でも、変えるべきところはまったく違います。

「考えない子」ではなく、「まだ見えていない子」だった

「難しい問題になると、すぐ『できない』と言います」という相談もあります。

そんな時、「最初から諦めないで」「もう少し考えて」と言いたくなると思います。

でも、あるお子さんは、口頭で聞けば内容を理解できていました。計算の工夫もできる。文章の場面について聞けば説明もできる。

能力がないわけではありませんでした。

本人は、何を考えればいいのか分からないまま止まっていた

問題の場面が頭の中に見えていないまま、答えを出そうとしていたんです。

そこで算数なら問題を「お話」として読む。国語なら場面が変わったところを目で分かるようにする。いきなり答えを書かせず、「これ、どんな話?」と口頭で確認する。

本人の頭の中に見えるものを作ってから、問題に向かうようにしました。

その後、お母さんから、

「見えたらできる!」が本人の合言葉になりました

と報告をいただきました。

国語では選択肢問題の正答率が上がり、それまで空白にしていた記述にも、何か書こうとするようになったそうです。

図を描けないのではなく、「描かない」と決めていた子もいました

別のお子さんは、自宅で過去問を解くと点が取れるのに、模試になると算数で大きく失点していました。

答案を見ると、普段なら描けるはずの図がありません。

試験環境なのか。時間配分なのか。疲労なのか。

いくつかの可能性を考えながら本人に話を聞くと、理由が分かりました。

「図を描いていたら、時間がもったいない」

小学5年生の頃から、テストで時間が足りなくなる経験が続き、周囲の子が速く解いていることも気になっていたそうです。

「もっと速くやらないと」と考えた結果、自分が本来、考えるために必要としていた工程を、自分で削っていたんです。

この子に必要なのは、「ちゃんと図を描きなさい」という注意ではありません。

なぜ描かなくなったのかを確認し、本当に図を描くと遅くなるのかを比べてみる。周りの子の速さではなく、自分が正解できる問題に意識を戻す。

そこまで分かって、初めて手立てが決まります。

「正しい方法」でも、原因を見ずに使えば外れる

親御さんは、子どもを助けようと思っています。塾の先生もそうです。子ども本人だって、できるようになりたいと思っています。

だから、

成績が下がった → 勉強時間を増やす
時間が足りない → もっと速く解く
復習が足りない → もう一度全部解く
ミスが多い → もっと丁寧にやる

となる。

どの方法も、それ自体がおかしいわけではありません。

大事なのは、その前に「なぜ?」を入れること

見えている現象にすぐ手を打つと、本人が本当に困っている場所とは違うところに、さらに負荷をかけてしまうことがあります。

「うまくいかないのは、正しい方法を知らないからだ」と、手を入れること、与えることを先走るのは危険です。

その子に何が起きているのかを確かめる前に、「正しいとされている方法」を当てはめている。それがいつまでも上手くいかない原因だということは、少なくありません。

子どもの学習は、「量」より先に「質」を整える

僕は「はじめての才能タイプ子育てセミナー」で、

質 × 量 = 学習成果

とお話ししています。

順番は「量 × 質」ではありません。

大人なら、「まず数をこなしているうちに上手くなる」が通用することがあります。仕事でもスポーツでも、回数を重ねることでポイントが分かり、習熟するからです。

でも、子どもの学習では少し注意が必要です。

分からない。やってもできない。点が取れない。

そんな状態のまま量を増やしたら、

✓ またできなかった
✓ 今日も分からなかった
✓ 自分はこの教科が苦手なんだ
✓ やってもどうせ無理だ

という経験の方が増える一方です。

中には「分かるようになりたい」という思いが強くて、がんばる方向に向かえる子もいます。

しかし大半の子は、「出来ない体験」から、勉強そのものが嫌になります。当然です。

僕が言う「質」は、その子が力を使える状態のこと

質が高いとは、難しい問題を解くとか、「自分の頭で考えよう」にこだわるといった意味ではありません。

僕がお子さんの実力を引き出すために注視するのは、

✓ 本人が理解しやすい形で情報を受け取れているか
✓ 分かったことを、次に使える状態まで残せているか
✓ その子が得意な頭の使い方で問題を考えられているか
✓ 環境や親の手助けが、本人の思考を邪魔していないか
✓ 不安や焦りに追われず、頭を使える状態になっているか

ということです。

ここが整ってくると、「分かった」「できた」「次もいけそう」という経験が増えます。

安心感が生まれ、自信がつく。すると、自分から取り組める量も増えていきます。

だから、「質 × 量」なんです。

勉強時間を増やそうとしていた子に、僕は逆のことを助言しました

最初にタイトルでお話しした女の子も、まさにそうでした。

小学4年生の後半、成績が下がってきていました。本人は真面目で、ちゃんと勉強していました。

ところが、

✓ 難しい問題になると考え込み、時間がなくなる
✓ 一度分かった問題でも、次に出ると解き方が出てこない
✓ 不安になるほど、急いで解こうとする
✓ 成績を上げたくて、さらに問題数を増やそうとする

ということが起きていました。

親御さんも「勉強時間をもっと増やした方がいいのかな」「家庭教師をつけた方がいいのかな」と考えていました。

でも、足りなかったのは勉強時間ではありませんでした

理解する力もある。集中する力もある。記憶する力もある。

ただ、問題を解くことが先に進みすぎて、一度理解したことを、自分の中に整理して残す工程が足りなくなっていました。

さらに成績低下への不安から、「もっと急がないと」「もっとやらないと」と、本人自身も量を増やす方向に進んでいました。

そこで、全部の問題を解き直すことをやめました。

必要な問題を選ぶ。一度解いた問題は、見て思い出すだけの復習も使う。模範解答は丸つけではなく「どう考えれば解けるのか」を確認するために読む。

そして、お絵描きや読書の時間も戻しました。

2週間後、机に向かう時間は減りました

その代わり、お絵描きや読書の時間が増え、本人から、

「できる問題が増えた」

という言葉が出てきました。

約9か月後、「先生のおっしゃっていた通りでびっくりしています」

このお母さんから、嬉しいご報告が届きました。

「成績も右肩上がりで安定してきました。先生のおっしゃっていた通りでびっくりしています。小5の内容的にも大変な時期のはずですが、去年より机に座っている時間は少なくなり、何より笑顔が戻ってきました」

実際、成績も大きく伸びています。

✓ 4科偏差値 48前後 → 59前後
✓ 2科偏差値 49前後 → 61〜62
✓ 算数偏差値 46前後 → 59前後

相談前は、成績が下がってきたことで「もっと勉強時間を増やした方がいいのでは」と考えていたご家庭です。

でも、変えたのは勉強量ではなく、本人が持っている力を使える学び方でした。

その結果、机に向かう時間は減った。それでも成績は大きく上がり、笑顔が戻った。

もちろん、この変化のすべてを一度のセッションだけによるものとは考えていません。本人の取り組みや、ご家庭、塾での学びも重なっています。

それでも僕は、

「もっとやる」より先に、「この子が力を使える状態」をつくる。

その大切さが、とてもよく表れた事例だと思っています。

では、どうすれば「本当の原因」が分かるのでしょう

ここが一番難しいところです。

同じ「できない」に見えても、知識が足りない子もいれば、分かったことを次に使える状態まで残せていない子もいます。

本来必要な思考の手順を、本人自身が省いていることもある。不安や疲労、周囲からの刺激が邪魔をしていることもあります。

だから僕は、まず「何をやらせるか」を決めるのではなく、

「なぜ、この子は今こうしているのか」を見ます

答案やノートを見る。普段どう勉強しているか聞く。うまくできている時との違いを探す。成績が変化した時期と、その頃の行動を照らし合わせる。

そして本人にも直接聞きます。

「この問題を見たとき、最初に何を思った?」
「ここで、なぜ図を描かなかったの?」
「このとき、頭の中に何が見えていた?」
「分からなくなったとき、どうしようと思った?」

才能タイプも使います。

ただし、「このタイプだから原因はこれ」と決めるためではありません。

その子に何が起きているのか、仮説を立てるための手がかりとして使います。

答案、本人の行動、これまでの学習経験、うまくいっている時の姿、親御さんとの関わり、そして本人の言葉。

それらを合わせて見ていくことで、その子がどこで力を使えなくなっているのかが見えてきます。

子どもだけでなく、親の「頑張る場所」も見直します

原因が分かったら、本人だけに「これをやりなさい」と渡して終わりではありません。

子ども本人には、自分の力を使いやすくする具体的な方法を。

親御さんには、どこを手伝い、どこを本人に任せ、どう伝えると受け取りやすいかを一緒に考えます。

親御さん自身にも才能タイプがあります。親にとって無理なく続けられる方法であることも大切です。

親も頑張っているからこそ、「どこを頑張るか」が大事です

これまで、勉強時間を増やすことに力を使ってきたのか。間違いを見つけることだったのか。予定通り進ませることだったのか。励ますことだったのか。

その頑張りが悪かったわけではありません。

お子さんが困っている場所と、親御さんが一生懸命助けてきた場所が、少し違っていた。

ということはあります。

そこが分かれば、親の頑張り方も変えられます。

「もっとやらせる」の前に、一度だけ考えてほしいこと

中学受験に向けて、お子さんは頑張っている。

親御さんもこれまで、調べたり、声をかけたり、教材を探したり、勉強を手伝ったりしてきたと思います。

それでも、どうもうまくいっていない。

そんな時は、

「もっと何をやらせればいいんだろう」

の前に、

「この子には、今、何が起きているんだろう」

と考えてみてください。

子どもは、今よりもっと頑張らなくても、

すでに持っている力を、まだ十分に使えていないだけかもしれません。

ここまで頑張ってきた親子へ

ここまで読んで、

「うちの子にも、まだ使えていない力があるのかもしれない」

「これまで頑張ってきたことを、ちゃんと成果につなげてあげたい」

と思った方もいるかもしれません。

僕が個別分析セッションを続けているのは、まさにそのためです。

中学受験の相談を受けていると、本当に力のある子が、うまくいかないやり方の中で自信を失っていることがあります。

本人は頑張っている。

親御さんも、ずっと考えて、調べて、支えてきた。

それでも結果につながらない。

そんな親子を見ると、僕は「もっと頑張ればいい」とは思えません。

ここまで積み重ねてきたものを、ちゃんと成果につながる方向へ戻してあげたい。

そう思います。

入試までの時間は限られています。

だからこそ、一度立ち止まって、

「この子は本当は何ができるのか」
「どこで、その力を使えなくなっているのか」
「何を変えれば、これまでの努力が成果につながり始めるのか」

を、できるだけ正確に見つけたい。

そのために僕は、これまでの受験指導の経験も、才能タイプの知見も、答案を見る力も、本人の言葉を聞き取る力も、親子の間に起きていることを観察する力も、全部使います。

そして、その子にできることを子ども本人に伝え、親御さんには、その力をどう支えればいいのかを具体的にお渡しします。

一回のセッションで、何もかも解決できるとは思っていません。

でも、

これまで何か月も、時には何年も頑張ってきた方向を修正し、その先の時間の使い方を変えることはできます。

それができれば、入試までの残り時間の価値は変わります。

僕は、子どもたちの力をかなり信じています。

答案に出ている点数だけで、その子の力を決めません。

今うまくいっていないからといって、「この子はここまで」とも思いません。

親御さんについても同じです。

これまでの関わり方がうまくいかなかったからといって、それまでの頑張りが無駄だったとは思いません。

子どもも、親も、すでにたくさんのものを持っています。

必要なのは、それを正しく使える場所を見つけることなのだと思います。

もし、

「うちの子の場合は、何が起きているんだろう」

と感じているなら、僕に見せてください。

持っている知識と経験、観察力と判断力を総動員して、一緒に考えます。

その子が本来持っている力を、ちゃんと使えるようにするために。

そして、ここまで親子で頑張ってきた時間を、この先の成果につなげていくために。

 

▼個別分析セッションの詳細はこちら
https://sub.mimamoru.ne.jp/p/2e8HrK5QSlbT