見守る子育て 最終更新日時:2025.05.13 (公開日:2025.05.13)

「動けない」には理由がある。 不登校の子どもと、今できる3つの関わり方

「動けない」には理由がある。 不登校の子どもと、今できる3つの関わり方

今回は、不登校や行き渋りで悩む子どもたち、そしてその子どもたちにどう関わればいいか戸惑っている親御さんへ向けて、僕の実体験と才能タイプ子育ての視点から、お伝えしたいと思います。

    Contents

  1. 「子どもが動かない」には、ちゃんと理由がある
  2. 「まだ治らないんです」という言葉に感じた違和感
  3. 実は「わからないこと」が一番つらい
  4. 「助けてほしい」でも「やらされるのは嫌」
  5. 今すぐできる3つのこと
  6. 「できるようになる」より先に、「わかってもらえた」を
  7. 親の安心が、子どもの力になる
小川  大介

教育家・見守る子育て研究所 所長

小川 大介

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。

私は学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として学習産業に関わってきました。
大学を卒業した後、ご縁をいただいて、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設し、以降18年間に渡って代表を務めてきました。

「子どもが動かない」には、ちゃんと理由がある

僕はこの2年間で、未就学児から高校生まで、60人以上の不登校や行き渋りの子どもたちと継続的に関わってきました。その中で見えてきたことがあります。それは、子どもが学校に行けない、体が動かないとき――その背景には必ず理由がある、ということです。

「朝になると気持ちが落ち込んで動けなくなる」 「行こうとは思っていたのに、玄関で体が止まる」

そんな子どもたちが、何を感じ、どう苦しんでいるのか。

僕のやっている「才能タイプ子育て」の視点から見ると、それぞれの子の言動には必然性があります。遺伝的な特性、感受性、環境との相互作用。その全体像を丁寧に見ていくと、「それはつらいよね」「動けなくて当然だね」と腑に落ちることばかりなんです。

 

「まだ治らないんです」という言葉に感じた違和感

あるとき、SNSで「うちの子の不登校はまだ治らないんです」と書かれているのを見かけました。その方を責めるつもりはまったくありません。でも、僕はこの「治る・治らない」という言葉の使われ方に、とても違和感を覚えました。

なぜなら、不登校や行き渋りは病気ではないからです。原因を取り除けば“治る”ものではありません。今その子の中に、言葉にならない不安や重さがある。ただそれだけなんです。

にもかかわらず、「まだ治らない」「どうしたら戻るのか」と考えると、子どもはますます追い詰められてしまいます。自分が「おかしい」「間違っている」と思い込んでしまい、苦しさが増していく。

 

実は「わからないこと」が一番つらい

不登校の子どもたちに共通する特徴の一つが、自分の状態を自分で理解できていないということです。

「昨日までは行く気満々だったのに、朝起きたらもうダメだった」 「なんで玄関で涙が出てきたのか、自分でもわからない」

大人が原因を知りたくなる気持ちはとてもよくわかります。でも、まず知っておいてほしいのは、本人も分かっていないということ。自分の中にある重たい石のような気持ちを、抱えているだけなんです。

しかも多くの子は、感受性が高く、周囲の空気や期待に非常に敏感です。親が「行けたらいいのに」と思っていることも、ちゃんとわかっています。その分、無理をしてしまう。頑張って頑張って、ある日突然ぷつんと糸が切れる。そんな子がとても多いのです。

 

「助けてほしい」でも「やらされるのは嫌」

不登校の子どもたちが本当に求めているのは、「助けてほしい」という気持ち。でも、「やらされる」ことは嫌なんです。

「大丈夫だよ、そのままでいいんだよ」 「あなたがそう感じていることには意味があるよ」

そんなふうに、子どもの“感じ方”そのものを肯定してあげてほしいのです。才能タイプという視点に立てば、「感じ方」「反応のしかた」に個性があるのは当たり前。そこを理解してもらえたとき、子どもは安心して、少しずつ前に進めるようになります。

 

今すぐできる3つのこと

ここからは、今この瞬間から親御さんができることを3つご紹介します。

 

① 言葉にならない「重たい石」があると認める

お子さんの中には、まだ言葉にならない重い気持ちがある。その存在を認めてあげてください。理由を探さなくて大丈夫です。「あるよね、それ」と思うだけで、子どもはふっと楽になることがあります。

 

② 苦手な環境・人を具体的に観察する

学校、先生、クラスの空気…何がどこでつらいのかを、観察してみてください。子どもが苦手としている相手にも、特徴があるはずです。「なぜそれがつらいのか」を見立てるヒントが、必ずそこにあります。

 

③ 社会性より、まず“存在そのもの”を認める

「挨拶しなさい」「みんなと仲良くね」と言いたくなる気持ちは自然です。でもその前に、「あなたはあなたのままで大丈夫」とまず伝えてください。子どもはその言葉に救われます。

 

「できるようになる」より先に、「わかってもらえた」を

子どもたちは「できるようになりたい」と願っています。でもその前に、「自分のことをわかってくれている」と感じられることが、何よりも大きな支えになるのです。

わかってくれる人がいる。 話を最後まで聞いてくれる人がいる。 自分の中にある「わからない気持ち」を受け止めてくれる人がいる。

それが、不登校という状態から抜け出す第一歩になります。

 

親の安心が、子どもの力になる

不登校や行き渋りは、子どもの才能の問題ではありません。 むしろ敏感さ、繊細さ、感受性の高さという“特性”があるからこそ、起こる反応です。

だからこそ、親御さんにも知っていてほしい。 「あなたのせいではない」ということを。

お子さんにとって必要なのは、 「やらされる」ことではなく「わかってもらえる」こと。

才能タイプ子育てという視点を通して、 お子さんの感じ方をまるごと肯定するところから、 一緒に子育てを見直していけたらと思います。

大丈夫です。 お子さんには、ちゃんと力があります。 その力を信じて、親であるあなた自身も安心してほしい。

僕も、全力で応援しています。