子どもの自己肯定感や学習意欲を育てる上で、「褒めること」が大切なのは、もはや当たり前のように語られる時代になりました。
けれど実際には、「何をどう褒めていいかわからない」「褒めようと思うのにイライラしてしまう」と感じている親御さんがたくさんいます。
子育ての現場で日々お子さんと向き合っている方こそ、決まり文句のような“褒めて育てる”という言葉に、プレッシャーを感じてしまっているのではないでしょうか。
そこで今回は、「褒めるのが苦手」と感じている方にも届いてほしい、“子どもを伸ばす声かけの心得”を3つにまとめてお伝えします。
伝わる褒め言葉には“理由”がある
「すごいね」「よくできたね」と言っても、なぜそれが“すごい”のかを伝えていなければ、子どもにはなかなか響きません。
例えば、「テストで80点を取った」ことを褒めるときも、
「一問一問を丁寧に見直してたからだね」
「漢字の練習をコツコツ続けてた成果が出たね」
と、行動や工夫に対して具体的に言葉を添えることで、「自分の頑張りをちゃんと見てもらえてる」と子どもは感じるのです。
褒めることは、単に結果を讃える行為ではなく、子ども自身が「何ができるようになったのか」「自分にはどんな力があるのか」を自覚する機会になります。
“上手な言葉”より“素直な気持ち”が届く
親が無理に「褒めなきゃ」と思ってかける言葉は、実は子どもに伝わりにくいものです。
本心からの喜びや驚きがこもっているからこそ、言葉は子どもの心に届きます。
「今のがんばり、見ててすごいと思ったよ」
「一生懸命やってるのが伝わってきて、嬉しかったな」
こうしたシンプルな言葉でも、親の素直な思いがこもっていれば、子どもはしっかり受け取ります。
子どもは大人以上に、“言葉の裏にある本音”を感じ取る力を持っています。
だからこそ、上手な褒め言葉よりも、あなたの率直な「嬉しい」「助かった」「えらいなあ」という気持ちを、そのまま言葉にして届けてみてください。
子どもの“がんばりの芽”を見逃さない目
実は、「褒めるのが苦手」と感じている方の中には、褒める材料に気づけていないだけ、というケースも多くあります。
結果だけを見るのではなく、子どものプロセスに目を向けてみてください。
・何度も間違えても投げ出さずに取り組んでいた
・普段より時間はかかっても、自分からやろうとしていた
・言われなくても自分で用意を始めていた
そんな些細な“前向きな行動”をキャッチするには、観察の目が必要です。
子どもが見せている努力の「芽」を見逃さず、「気づいてるよ」「応援してるよ」と伝えることが、子どもにとっては何よりの励ましになります。
褒める力は、育てられる
実は「褒めるのが苦手」と感じている親御さんの多くが、「自分自身があまり褒められて育ってこなかった」という背景をお持ちです。
「やって当たり前」
「お姉ちゃんなんだから」
「お父さんもできたんだから」
そんな言葉に囲まれてきた方にとって、褒めるという行為がピンとこないのは当然のことです。
けれど、今からでも遅くありません。
まずは自分の過去のがんばりを、自分で「よくやってたよね」と認めてあげることから始めてみてください。
そうすることで、目の前のわが子の努力にも、自然と目が向くようになります。
見守る子育ての本質──「操作しない」関わり方
最後に、大切なことをひとつ。
子どもは「親の思い通りに動かそう」とされると、必ず反発します。
でも、「あなたのがんばりを応援してるよ」というスタンスで見守られると、自分で動き出そうとする力が湧いてきます。
つまり、「操作しない」ことが、子どもが自ら育つ力を引き出す土台なのです。
あなたの関わりが、子どもの心の栄養になります。
無理に褒める必要はありません。
でも、気づいたときには素直な言葉で伝えてあげてください。
「あなたのことを見てるよ」
「がんばってるって、ちゃんとわかってるよ」
それだけで、子どもの中に自信と安心が育ちます。