Kくんは「わからない子」ではなかった
Kくんは、国語でも算数でも理科でも、いくつものもったいない失点がありました。
文章を読んでいる。
話の流れもわかっている。
知識もある。
なのに、テストでは点数につながりきらない。
こういう状態を見ると、親は不安になります。
「ちゃんと読んでいないのかな」
「集中力がないのかな」
「もっと練習させないといけないのかな」
そう考えたくなるのも自然です。
でも、セッションでKくんと話していくと、まったく違う景色が見えてきました。
Kくんは、文章が読めないわけではありませんでした。
むしろ、読んだ文章を頭の中に残す力がある。
話の流れを覚えておく力もある。
問題を見た瞬間に、「あ、これだ」と答えが浮かぶ力もある。
ただ、その答えが浮かんだあとに、本文へ戻って確認する前に、思い込みで答えてしまうことがあまりに多かった。
ここで大切なのは、
「確認しなさい」
と注意することではありません。
そんなことは、本人もわかっています。
お父さんやお母さんにも何度も言われてきたと、本人自身が教えてくれました。
でも、わかっているのにできない。
では、そのときKくんの中では何が起きているのか。
それを読み解くのが、才能タイプ子育てです。
「最後まで行かなきゃ」が、Kくんの手を急がせていた
Kくんに聞いていくと、テスト中の心の動きが見えてきました。
Kくんは、制限時間の中で最後の問題までたどり着かなければいけない、という感覚を強く持っていました。
問題を見て答えが浮かぶ。
早く書く。
次へ進む。
最後まで行こうとする。
それは、雑にやっているのではありません。
本人なりには、点数を取りたいから急いでいるのです。
最後まで解けば、少しでも点数が増えると思っているのです。
でも、その結果、本当は正解できる問題を落としてしまう。
選択肢を最後まで読めば正解できた問題。
本文に戻れば確かめられた問題。
落ち着いて見れば、ちゃんと取れた問題。
そうした問題が、ぽろぽろ落ちていました。
ここでKくんに伝えたのは、
「全部を解き切ること」よりも、「正解に変える力」を高めよう
ということです。
全部答えなくてもいい。
それよりも、取れる問題をきちんと点数に変える。
テストの受け方の目標を変えるのです。
これは、単なるテクニックではありません。
Kくんのような知識欲求加速タイプ・完璧主義型の子は、わかると早い。
知っていることを出す力もある。
でも、「早く正解したい」「ちゃんとやりたい」という気持ちが強いからこそ、テスト中に自分を急がせてしまうことがあります。
だからこそ、必要なのは「もっと落ち着きなさい」ではなく、
落ち着けば点になる、という頭の中での理解と納得、
そして実際に点数が上がった成功体験を作ることなのです。
「見たことがない問題は無理」と感じていた
Kくんの話で、とても印象的だったことがあります。
見たことがない問題を見ると、Kくんの中には「無理」という感覚が浮かびやすいのです。
これは、知識欲求加速タイプ・完璧主義型の子にはよく見られる反応です。
知っていることは強い。
覚える力もある。
興味を持てば、どんどん調べていける。
でもその一方で、やり方がわからないもの、見たことがないものには、警戒心が出やすい。
「これ、習ってない」
「見たことがない」
「たぶん無理」
そう感じた瞬間に、本当は使える知識まで奥に引っ込んでしまうことがあります。
Kくんにも聞きました。
「無理と思った問題でも、あとで見たら、実はできる問題もあったよね」
Kくんは、それを知っていました。
でも、テスト中に「無理」と思った瞬間には、
「いや、でも実はできるかもしれない」
という考えが浮かんでこない。
ここが、とても大切なポイントです。
できないのではありません。
その瞬間に、自分の中の「できる記憶」に手が届かなくなっているのです。
だから私は、Kくんにこう提案しました。
10回中3回でいいから、「無理」と思っても、もう一度読んでみよう。
10回全部でなくていい。
3回でいい。
Kくんは、ここでとてもいい言葉を返してくれました。
「今から絶対にできるとは言い切れないけど、絶対に無理とも言えない」
僕はこの言葉が、とても好きです。
「さすが完璧主義型!!(笑)」と思わず口に出ました
できると約束しなくていい。
でも、やらないとも決めていない。
Kくんが自分の才能タイプに忠実に、
そして真剣に考えてくれた姿がありました。
Kくんはここから、間違いなく変わっていける。
成果を上げていける。
期待感に満ちています。
算数の文章題で起きていたこと
Kくんは、図形問題では力を出せていました。
図がある。
書き込める。
習った解法を思い出せる。
すると、動ける。
一方で、文章題になると、力が出きらないことがありました。
ここで僕は、Kくんに聞きました。
文章題を読んだときに、国語の文章を読むときのように、場面が頭の中に浮かんでいるのか。
たとえば、
5mのひもがあります。
長い方と短い方に分けます。
長い方は、短い方の3倍より20cm長いです。
このような問題を読んだとき、頭の中に「ひも」が見えているか。
長い方と短い方に分かれる様子が浮かんでいるか。
短い方が3つ分あって、さらに20cm長い、という場面が立ち上がっているか。
Kくんの場合、そこが十分に起きていないようでした。
数字を見て、式へ行く。
言葉を読んで、すぐ処理しようとする。
でも、場面が浮かぶ前に式に行くから、かえってずれてしまう。
ここで、Kくんの力を別の角度から見直しました。
Kくんは、友達関係の話をしているとき、かなり細かく場面を思い出せます。
誰がどんなふうに話していたか。
どんな空気だったか。
どんな出来事があったか。
歴史の話でも、幕府の仕組みや政治の方針に興味を持ち、役割や構造を覚えようとします。
つまり、Kくんには「場面」や「仕組み」をつかむ力があるのです。
算数の文章題だけ、その力につながっていなかった。
だから、Kくんに必要なのは、ただ問題数を増やすことではありません。
算数の文章題を、おしゃべりしながら場面として立ち上げること
です。
お母さんに読んでもらう。Kくんは頭の中で想像する
具体的には、お母さんに問題文を読んでもらうことにしました。
一文ずつ、少し区切りながら。
Kくんは、それを聞きながら、頭の中に場面を作ります。
「5mのひもがあるんやって」
「それを2つに切るんやって」
「長い方は、短い方の3倍より20cm長いんやって」
こうして、問題をいきなり解くのではなく、まず「何が起きているか」を頭の中に出していく。
これは、Kくんにとっては勉強というより、おしゃべりに近い入り方です。
そして、ここが大切です。
Kくんには、おしゃべりが必要なのです。
もちろん、ずっと雑談をすればいいという意味ではありません。
Kくんの頭の中で、言葉と場面と式がつながるために、会話が必要なのです。
お父さんが作ってくださっていたノートも、とてもきれいでした。
図も式も整っていました。
見た瞬間に、丁寧に作られていることが伝わるノートでした。
ただ、Kくんには、そこにもう一つ足したいものがありました。
それは、Kくん自身の言葉です。
式の横に、
「まず、短い方を1つ分と考える」
「長い方はその3つ分に20cm足したもの」
「先に合計から20cmを引く」
というように、Kくんがわかる言葉で説明を足していく。
お父さんのきれいなノートに、Kくんの言葉を重ねる。
それだけで、ノートは「解き方の記録」から、
Kくんの頭が動き出す道具
に変わっていきます。
お母さんにも、大切な気づきがありました
今回のセッションでは、Kくんだけでなく、お母さんにも大切な気づきがありました。
お母さんは、リズミカル記憶タイプ・実は繊細型です。
このタイプの人は、決めたことをきちんとやろうとします。
予定を守ろうとします。
やるべきことを抜けなく進めようとします。
これは、とても大きな強みです。
でも、中学受験のように、課題も予定も次々に出てくる環境では、その強みが苦しさに変わることがあります。
「カリキュラムをこなさなきゃ」
「次のテストまでに間に合わせなきゃ」
「やると決めたものは終わらせなきゃ」
そう思ううちに、目の前の子どもが何を感じ、何につまずき、どこで止まっているのかが見えにくくなることがあります。
お母さん自身も、セッションの中で、
「タスクをこなすことだけが正義みたいになっていた」
ということに気づかれていました。
これは、親として未熟だからではありません。
タイプの力が、受験という環境の中で強く出ていたのです。
だからこそ、お母さんにも自分のタイプを知ってもらうことが大切です。
子どもの才能タイプだけを知っても、家庭は変わりきりません。
親の見方、親の反応、親の不安の出方も一緒に見ていくことで、初めて親子の関係が整い始めます。
「わかった」と自分で言うまで待つ
Kくんのような完璧主義型の子にとって、とても大切なことがあります。
それは、
本人が「わかった」と自分で言うまで待つ
ということです。
大人が説明した。
大人はわかりやすく言ったつもり。
だから、もうわかったはず。
そう思って次へ進めてしまうと、Kくんの中には何も残らないことがあります。
Kくんは、自分で確認したい。
自分の中で、納得したい。
「よし、わかった」と言えるところまで持っていきたい。
そこまで待ってもらえたとき、Kくんの力は動き始めます。
逆に、大人のペースで急かされると、止まってしまう。
これは、わがままではありません。
能力の使い方の問題です。
Kくんが持っている力を本当に使うためには、Kくん自身の納得が必要なのです。
最後に、Kくんが言ってくれたこと
セッションの最後に、Kくんに聞きました。
今日、先生と話して、どんなことを思った?
Kくんは、言葉を探しながら、こういうことを話してくれました。
今までよくわからなかったことが、わかった。
これからの自分の気持ちとしても、心に残った。
僕は、この言葉を聞いて、とても嬉しくなりました。
点数が何点上がるか。
偏差値がどう変わるか。
もちろん、それも大切です。
でも、その前に必要なことがあります。
子どもが、自分のことを少しわかること。
親が、わが子のことを少し違う目で見られるようになること。
家庭の中で、「この子はまだ伸びる」と感じられる空気が生まれること。
その瞬間に立ち会えたことが、僕にとって本当に楽しかったのです。
個別分析セッションで起きていること
個別分析セッションは、単に勉強方法を教える時間ではありません。
子どもの答案を見ます。
ノートを見ます。
学習の様子を聞きます。
親子の会話を聞きます。
才能タイプをもとに、その子の頭の使い方、心の動き、止まりやすい場面を見ていきます。
そして、本人にも聞きます。
才能タイプに合わせたピンポイントの問いかけなので、
お子さんによって僕が使う言葉は変わります。
「そのとき、頭の中で何が起きている?」
「どんな言葉が浮かぶ?」
「何ならできそう?」
「どこは少ししんどい?」
このやり取りの中で、子どもは少しずつ自分を説明し始めます。
親は、わが子のことを見直し始めます。
「なんでできないの?」
ではなく、
「そういうことが起きていたのか」
に変わる。
この変化が、とても大きいのです。
「うちの子、すごいな」と思いながら見てほしい
セッションの最後、お母さんにお伝えしました。
Kくんは、面白い子です。
うちの子、すごいなと思いながら、よく見てあげてください。
これは、ただ褒めましょうという話ではありません。
子どもを正しく見る、ということです。
Kくんには、知識を増やす力があります。
興味を持ったことを調べる力があります。
歴史の仕組みを面白がる力があります。
自分で決めたことに向かう力があります。
そして、自分の中で「わかった」と言えたときに、しっかり動き出す力があります。
その力が、今はまだ点数に変わりきっていないだけです。
ならば、やるべきことは、子どもを責めることではありません。
その子の力が動き出す順番を見つけることです。
その子の頭の中に合った学び方へ整えることです。
親の不安が、子どもの力を急かしすぎないようにすることです。
才能タイプ子育ては、子どもを型にはめるものではありません。
その子の中にある力を、親子で見つけ直すためのものです。
だから、個別分析セッションは楽しい。
できない理由を探す時間ではなく、
その子がこれから伸びていく道筋が見えてくる時間だからです。
親子の表情が少しやわらぎ、
子どもの声が少し前に出て、
お母さんのまなざしが少し変わる。
その瞬間が、僕は何より嬉しいのです。
▶︎小川大介の個別分析セッション
https://sub.mimamoru.ne.jp/p/2e8HrK5QSlbT